リオデジャネイロ五輪女子ダブルス金メダルの高橋礼華(27)松友美佐紀(25=ともに日本ユニシス)組が3年ぶり2度目の優勝を飾った。決勝で金ハナ、孔熙容組(韓国)に2-0と完勝。世界の頂点を極めたことで、高橋は目標を見失い、一時引退も考えた。女子マラソン五輪メダリスト有森裕子氏(50)の助言もあり、東京五輪連覇へ気持ちをリセット。地元で五輪金メダリストのすごみを見せた。

 相手の心理を見透かしていた。韓国ペアを圧倒した「タカマツ」。高橋は試合中に相手の表情を冷静に分析。「今(気持ちが)引いている、強気だ」と判断し、強いスマッシュ、ドロップショットを打ち分けた。松友との連係も隙がない。3年ぶりの優勝。高橋は「今日は見えていた。五輪後も良くなっている」と進化を実感した。

 「リオのときのような気持ちが戻らない。もう金メダルは取れない」。五輪後から苦悩し、頭に引退すらよぎった。6月に女子マラソンの有森氏と会食した際、「リオの気持ちを取り戻すのは無理」と断言された。「最強の自分」を目指す目標はどうかと聞くと「それなら絶対に東京で連覇できるよ」と、背中を押され、心のモヤモヤが晴れた。

 奮起を促される出来事もあった。先月の世界選手権で初メダルとなる銅メダルを獲得。喜びはあったが、帰国後、関係者に「五輪金メダリストにおめでとうじゃないよな」と言われた。松友と「五輪金メダリストは金メダルじゃないと駄目。じゃあ頑張って金メダルを取ろう」と確認し合った。

 五輪、世界選手権に次ぐ格付けのスーパーシリーズ(SS)では今大会で9度目の優勝。心の試行錯誤があっても昨年3月から世界ランク1位を維持する。「SSはファイナルも出られれば、あと5戦。連続で優勝していきたい」と高橋。迷いから抜け出した「タカマツ」は、東京五輪へ、最強の地位を不動のものにしていく。【田口潤】