【バンクーバー(カナダ)9日(日本時間10日)=松本航】シニア1年目でグランプリ(GP)ファイナルを制した女子の紀平梨花(16=関大KFSC)が22年北京オリンピック(五輪)金メダルへ、本格的な4回転ジャンプの練習を再開する。

フリーから一夜明け、会場でエキシビションに出演。まずは男女通じて日本勢初となるGPデビューシーズンでのファイナル、全日本選手権(21日開幕、大阪)の2冠へ突き進み、同選手権後に4回転トーループ習得を目指す。

世界に衝撃を与えたシニア1年目での頂点から一夜明け、紀平の興奮はすでに収まっていた。「終わってから30分はうれしさがあったけれど、今は疲れもあって、よく分からない感じ。1位という結果は本当にうれしい」。エキシビションの出演は最後から3番目。紫の衣装でアラン・ウォーカーの「フェイデッド」を演じ、観衆を沸かせた。

16歳の志は常に前向きだ。2月の平昌五輪(ピョンチャンオリンピック)は年齢制限で出場資格がなく、目指してきたのは22年北京五輪での金メダル。得点源の大技トリプルアクセル(3回転半)はシニア転向により、ショートプログラム(SP)とフリー合計3本の構成が可能となった。

それでも五輪女王を目指すには「80%ぐらい。(残りは)4回転だと思う」。現状に満足することなく「どういう時代が来るか分からないけれど、練習するだけしておきたい。全日本後に(4回転トーループの)練習を再開します」とほほえんだ。

頂点に立っても危機感は募る。今大会と同時に行われたジュニアGPファイナルのフリーでは、ロシアの14歳トルソワが2種3本、シェルバコワが4回転ルッツ2本の構成に挑戦。浜田コーチは「ロシアのジュニアの子たちも上がってくる。もちろん4回転は1つ欲しい。(フリーで)トリプルアクセル2本、4回転1本あれば、一番高い台に上がれるんじゃないかな」と五輪での青写真を描く。

以前からトーループ、サルコーの2種類を練習し、17年7月の全日本ジュニア合宿では公の場で初めて4回転サルコーに成功。シーズンに入ると目の前のプログラムに磨きをかけてきたが、時間のゆとりができる全日本選手権後に特訓を再開だ。

五輪金メダルへ、現状は「まだまだなので、10%ぐらい」と自己評価。4回転は精度次第で来季の導入を視野に入れており、立ち止まっている暇はない。

そのためにも、まずは初の全日本女王へ全力で突き進む。GPデビューシーズンでのファイナルとの2冠となれば、史上初の快挙だ。「全日本選手権は今年を締めくくる大事な試合。ショート、フリーで完璧な演技をそろえたい」。地元関西での大舞台で、日本女子の新時代到来を告げる。