バドミントン男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(25=NTT東日本)が遠征先のマレーシアで交通事故に遭ったことを受け、日本バドミントン協会の銭谷欽治専務理事(56)は14日に都内で現況について説明し、3月11日開幕の全英オープン(バーミンガム)で実戦復帰を目指すという見通しを示した。

桃田は15日に帰国する予定。東京オリンピック(五輪)での金メダルが期待されるエースの今後はいかに? 08年北京、12年ロンドンと2大会連続で五輪に出場した池田信太郎氏(39)が本紙の取材に見解を述べた。

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運転手が亡くなるほどの事故の中、骨折もなく全身打撲というのは本当に良かった。遠征中に肉離れや靱帯(じんたい)損傷をする選手もいるが、自分で招いたケガの場合、また同じトレーニングをしていると慢性的になるのではという不安が残る。今回の事故のような外的要因の場合、ケガさえ治ればその心配はないだろうが、事故に遭った精神的ダメージは、自分にも経験がないので、こればかりは桃田自身が試合に出てみないと分からない。

桃田は昨年から今大会(マレーシアマスターズ)までずっと勝ち続けてきた。五輪選考ポイント(P)は断トツの1位(桃田は10万5968P。2位周天成=台湾、8万178P)であり、しばらく欠場しても変わらないだろう。無理せずにコンディションが整った段階で復帰できる状況にあるのはいいことだ。ただし、世界ランキング1位に与えられる第1シードを取らないと、100%優位には立てない。五輪まで数大会エントリーしなくてもその可能性はあるが、勝利を重ねて1位をキープすることは大事だ。

桃田に関しては試合に出て負けないことが1番の調整法だ。世界ランキング1位になり、周りの選手が対策をして挑んでくる中、試合に出て負けないことで、リードを許した相手にも「逆転されるかも」という不安を与えてきた。調整不足で試合に出るよりは、焦らずにしっかり準備して負けない試合をどれだけ作れるかが大事だと思う。

そんな中で、3月の全英オープン出場に向けて調整するというのはいいことだ。五輪出場が決まった選手たちは今後出場をキャンセルする大会が増え、真剣勝負も減ってくる。だが、全英オープンだけはどの選手もタイトルが欲しく、パフォーマンスをごまかさない。もちろん万全でなければ出場する必要はないが、間に合うなら全英オープンで真剣勝負の中で、強さを見せつけて欲しい。

精神的ダメージは計り知れないが、まずは焦らずにしっかりと試合に出られる状態にすること。東京五輪での金メダルへ、さまざまな人の応援を背に頑張ってもらいたい。(08年北京、12年ロンドン五輪代表)

◆バドミントン五輪選考レース 東京五輪選考レースは、19年4月29日~20年4月26日までに出場したワールドツアーのうち、獲得ポイントの高い10試合の合計で争われる。桃田は現在、19年5月から11戦出場し、8勝を挙げ、10万5968Pで1位。2位の周天成(台湾)は8万178Pで約2万5000P以上の差がある。既に10戦以上を戦っている周は、上位の大会10戦全部が8強以上。周が桃田を上回るためには、今後はワールドツアーのポイントの高い大会で好成績を収めてポイントを加算していくことになる。4月末まででPの1番高い全英オープンに桃田が出場せず、周が優勝すると、周には1万2000Pが加算されると同時に10番目の成績となる香港OP8強の5040Pが消え、桃田との差は約7000Pだけ詰まる。10戦以上戦っている桃田は5月まで出場しなくても現在のPは維持され、1年間のPで世界ランキングが決まる。

◆池田信太郎(いけだ・しんたろう)1980年(昭55)12月27日、福岡県遠賀郡生まれ。九州国際大付高-筑波大。坂本修一とのペアで日本代表入り。07年世界選手権で日本男子初の銅メダル。北京五輪では初戦敗退。09年潮田玲子と混合ダブルスを組み、12年ロンドン五輪出場。15年9月引退。175センチ、68キロ