新潟県内の県立高校では8日、新型コロナウイルスの影響で休止していた部活動が再開された。八海のレスリング部はウエートトレーニングを中心に約2カ月ぶりに全員で体を動かした。日本レスリング協会は、10月の鹿児島国体が開催されなかった場合、高校の全国大会開催を新潟で予定しており、同校はそこに目標を絞って始動した。

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体中から汗が噴き出すと同時に気持ちも乗ってきた。誰からともなく発せられた掛け声が、八海のレスリング部員14人の間に自然と広がった。「やはり仲間がそろうと元気が出る」。稲葉亮汰主将(3年)の表情は明るい。

レスリング場に全員集まっての練習は4月上旬以来、約2カ月ぶり。県からの要請でスパーリング、打ち込みなどの対人はまだできない。筋トレもお互いの距離を2メートルほど空けるように意識。ただ、関川博紀監督(47)は言う。「みんな顔つきが違う。全員で元気よく体を動かせる。それが1番いい」。部員の意欲を感じ取った。

「LINE(ライン)でみんなと連絡を取っていた。やっと一緒にできると喜び合った」と稲葉主将。この2カ月、個別のトレーニングが続いた。1日に授業が始まってから、関川監督の指示がなくても部員は自然と筋トレ器具を使って朝練習を始めていた。「思ったより体力は落ちていない。それぞれがしっかりやっていたと思う」。関川監督は自主トレ期間の取り組みを評価した。

目標もある。個人戦で行われる10月の鹿児島国体だ。さらに日本レスリング協会は6日、もし国体が中止になった場合、代替の高校全国大会を10月に新潟で開催する意向を明らかにした。詳細は未定だが、ターゲットはある。稲葉主将は「どちらかは行われると思う。そこを目標にする」と語った。

八海は、新潟市で毎年開催されている3月の全国高校選抜大会の団体戦に、県王者として出場を決めていた。全国高校総体の出場をかけた県高校総体も昨年のメンバーが7人そろい、2連覇を狙っていた。だが、新型コロナウイルスの感染拡大でどちらも消えた。部史上最強チームとして「全国ベスト8」を狙えると自負していた。その力の見せどころがなくなった。

たまった思いを10月にぶつけることで全員が一致している。「3年生は高校最後、1、2年生は次につなげる。(国体か代替大会か)どっちになっても、全力でぶつかる」。稲葉主将は腕試しの秋を見据えた。【斎藤慎一郎】