国際スケート連盟(ISU)が創設したフィギュアスケートの表彰式「ISUスケーティング・アワード」が、日本時間11日午後11時からオンラインで行われた。

世界の選手、コーチらが対象の全7部門。「最優秀選手賞」「最優秀衣装賞」にノミネートされていた、冬季五輪男子2連覇の羽生結弦(25=ANA)は初代の「最優秀選手賞」に輝いた。「最優秀衣装賞」はチョック&ベーツ組(米国)に譲ったものの、大きな拍手で2人を祝福した。

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記念すべき初代MVS(MostValuableSkater)に羽生が選ばれた。ともに昨季グランプリファイナル王者のネーサン・チェン(男子シングル=米国)ガブリエラ・パパダキス&ギヨーム・シゼロン組(アイスダンス=フランス)と最終候補に入っていた中、羽生は3組の中で今季唯一のチャンピオンシップ覇者、4大陸選手権の優勝者として発表を待った。

「(すべて英語で)すべての人の目、声、期待がプレッシャーになりますが、克服するためには練習しかありません。大きな期待に応え、超えるものを出していきたい。きちんと応えていく。100%じゃなくて120%を出していく。責任は非常に大きいですが、期待に応えて成功を収めた時の達成感は素晴らしいものです」

黒のスーツにノータイ、ヘッドマイク姿でリモート出席。そして名前が呼ばれた瞬間、謙虚な笑みで史上初の賞を受けた。

「毎日の中で常に思っているのは、より強く、よりうまくなろうということ。(最後に日本語で)皆さんのおかげで、こうやってスケートができていること、自分が追い求めるスケートができていることが本当に幸せです。いつも応援ありがとうございます。そしてこれからも一生懸命、自分の理想のスケートを追い求めて頑張っていきます」

最優秀選手(スケーター)であるMVSの選考基準が「ファンの人気、メディアの注目度、スポンサーの獲得によってフィギュアスケート競技の大衆化とレベル向上に貢献したスケーター」と示されていた以上、誰よりも羽生がふさわしかった。成績面も文句のつけようがない。14年ソチ五輪で男子アジア勢初となる金メダル。18年平昌五輪ではディック・バトン氏(米国)以来66年ぶりの冬季大会2連覇を果たした。GPファイナルは13年から16年まで史上初の4連覇、世界選手権優勝2度。そして今年2月の4大陸選手権を初制覇した。ジュニアのGPファイナルと世界選手権も合わせた主要タイトル6冠「スーパースラム」を達成。男子では初の快挙に、初代MVSの称号が融合するのは自然な結果だった。

「ISUスケーティング・アワード」は今年創設。候補者はインターネット投票(一般、メディア、ISUメンバー)などを基に選考され、先月26日に各部門の最終候補者3人が決定した。本来は3月の世界選手権モントリオール大会(カナダ)最終日に開かれる予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響による大会中止に伴い、延期となっていた。約3カ月半後にオンラインで開催にこぎ着け、羽生の笑顔が全世界に配信された。【木下淳】