04年アテネ五輪柔道男子90キロ級銀メダルの泉浩さん(38)が24日、「平成の三四郎」こと古賀稔彦さんの死を悼んだ。

名門私塾、講道学舎の15歳上の先輩の死を報道で知り「本当にびっくりしました。病気の件はうわさで聞いていましたが、まさかこんなに早くとは…。正直、まだ信じられないです。心からご冥福をお祈りいたします」と哀悼の意を表した。

泉さんはマグロ漁で有名な青森県大間町出身。72歳で死去した父忠志さんは漁師で、「大間の男たるもの漁師」が必然の環境で育った。しかし、古賀さんに憧れていた9人兄妹の四男は、柔道の強さを追求して12歳で単身上京を決意。反対する父に「10年でものにならねば漁師さなるじゃ」と約束し、講道学舎に入門した。古賀さんからは指導を受けることもあり、「(背負い投げなどの)担ぎ技はすごく勉強になりました。横柄なく誰にでも優しく笑顔を絶やさない方で、その場の雰囲気を明るくする話術は本当にすばらしかったです」と思い返した。

アテネ五輪で泉さんは、女子代表コーチだった古賀から話題となった「マグロTシャツ」(通称マグT)の存在を教えてもらった。胸元の「マグロ一筋」のロゴが特徴的で、泉さんの両親ら大間町の地元応援団が会場で着ていたことで全国から注文が殺到。当時は1年間で例年の10倍となる約5000枚を売り上げた。

「会場でマグロTシャツに最初に気づいたのが、実は古賀先輩で『泉、お前んとこすごいな。(Tシャツに)マグロ一筋と書いてあるぞ。最高の応援団だな』と言葉をかけてくれました。五輪の応援では、その選手にちなんだグッズなどもあるんだと初めて知りました」

現役引退後も柔道教室などで顔を合わせるたびに、信頼する兄貴分として親身になって話を聞いてくれたという。

3月24日。コロナ禍の影響で1年前には東京五輪の延期が決まり、その1年後には古賀さんの命日となってしまった。現在は東京・大田市場内の鮮魚卸売会社で働く泉さんは「古賀先輩も東京五輪を楽しみにしていたはず。3月24日は特別な日になりそうです」と、偉大な先輩の突然の死に無念の思いを募らせた。【峯岸佑樹】