<ラグビー・トップリーグ:神戸製鋼13-13パナソニック>◇第6節◇3日◇ホワイトカンファレンス(白組)◇神戸ユニバー記念競技場

終始たたきつけるように振った「雨」が、がっぷり四つの激闘を演出した。

13-13の試合最終盤。途中出場したパナソニックFB山沢拓也(26)が、場内をどよめかせた。相手陣で防御ライン裏にキック。捕球した味方から受けたボールを、再度足で転がせた。

インゴールで転々とするボールにCTBディラン・ライリー(23)が全力疾走。最も近くまで迫り、あとは押さえるだけだった。

だが、ボールはインゴールの外へと飛び出し、8523人の観客のため息に包まれた。勝ち越しのトライには至らなかった。

数秒後に後半40分を告げるホーンがなった。雨でぬれたピッチがボールの転がりにも影響を与え、ロビー・ディーンズ監督(61)は「もう少しで試合に(勝利という)インパクトが与えられた。彼は試合にスパークを与えてくれる」と存在感を放った山沢を評した。

約3年半ぶりとなった東西の強豪対決。開幕5連勝同士の一戦はラグビー王国ニュージーランドでも生中継される注目ぶりだった。

前半はPG2本ずつで6-6。神戸製鋼は後半3分にWTB井関信介(25)が味方のキックパスを右隅で押さえて勝ち越したが、同11分に相手SH内田啓介(29)のトライなどで追いつかれた。パナソニック戦は試合前時点で15連敗中。03年から勝ちがない中で、試合に決着をつけるチャンスは後半37分に巡ってきた。

ゴールほぼ中央、45メートルの位置で得たペナルティー。今季新加入で途中出場だった元ニュージーランド代表SOアーロン・クルーデン(32)はゴールポストを指さし、自らPGを蹴った。横風が吹いていた。

「ボールの当たりは良かった。でも振り返って、もう1回、同じ時間を過ごすなら、ボールを置く時に真ん中にしたい。(風の影響を考慮して)少し右に寄せて置いたら、右に外れた」

11年W杯ニュージーランド大会で優勝に貢献した名司令塔でさえ、天候の影響が繊細な感覚を狂わせた。

10日の最終節を残し、パナソニックが勝ち点26で白組1位。同1差で神戸製鋼が追う。今節の結果で両チームの同組2位以内が決まった。プレーオフトーナメント(17日開始)で再戦する可能性は、決勝(5月23日、東京・秩父宮ラグビー場)に限られる。

パナソニックのディーンズ監督は、冷静に言った。

「両チームともにプラン、戦術をもって臨んだ。戦術の実行はこの天候もあり、両チームとも持っているスキルが出せなかった。もう1度、対戦する時には、またいい試合になると思います」

この日、トップリーグ100試合出場を飾った神戸製鋼のフランカー橋本大輝(34)には、持ち越しとなったパナソニック戦の自身初勝利が近づいた手応えがあった。

「天候のせいにする訳じゃないけれど、もっと戦えたんじゃないかなと思う。2009年に入部して戦ってきたが、今回が一番、勝つ可能性があった感じの試合内容だった。神戸製鋼も年々強くなっている。(引き分けを)ポジティブにとらえたい」

激闘の続きを、誰もが待ちわびている。【松本航】