16年世界ジュニア女王の本田真凜(20=JAL)が引退時期を示唆した。約11カ月ぶりの公式戦を終えた後、報道対応の中で「自分の中では、大学生が終わるまでかなと思う」と話す場面があった。

これまでも引き際については意識してきたようで、本当に大学を一区切りとする場合は、明大2年の真凜にとって残り3シーズンとなる。18年の全日本選手権で15位に沈むなど近年は苦しんでいるが、今季は「吹っ切れて楽しい気持ちで滑れている」という。前向きになった中、現状の心境を示した上で「1つ1つの試合を全力で。また輝けるようにしたい」と意気込みを語った。

背景にあった出来事の1つとして、今春を挙げた。昨年の全日本選手権を棄権した後、体調が優れないこともあって3月まで競技の第一線から離れていたという。「スケート場には行ってはいたんですけど、ジャンプは跳ばなかったり。スケートの感触や気持ちを確かめていて。その中でアイスダンスの靴も買ってみたんです」。

同種目で昨年まで全日本ジュニア選手権を2連覇した西山真瑚(早大)の紹介もあった。シングル選手の靴とはブレードの長さやエッジの形状が違う。「その靴で滑ってみて、アイスダンスの練習をしてみたら楽しいと思いましたし、違う種目に出合えて良かったなと。そして、いろいろ考えた上で、また(シングル)選手として、アスリートとして頑張りたいと思いました」。また競技に戻るスイッチが入った後、出た言葉が「自分の中では、大学生が終わるまでかなと思う」だった。

現実的には大学を集大成とする選手は多い。兄の太一さんも今春、関大卒業を機に引退していた。一方で新たなモチベーションもある。妹で、女優業とスケートを両立する望結(17=プリンスホテル)がこの日「来年、お姉ちゃんと全日本に出たい。その夢がかなうまで、スケートはやめられない」と語ったことだ。

真凜は「今まで、私にとっては、お兄ちゃんが一緒に練習して、一緒に全日本に出てきた人。引退して、それがなくなって。自分が難しい時、一緒にやってきてくれた存在がいなくなってしまった。でも、妹にとっては自分が、自分にとっての兄のような存在なのかな。今回も(SPで)同組になれてうれしかったし、試合になったら思い切り挑む望結の姿は、さすがだなと思いました。お仕事とかあって練習時間がない中、深夜、早朝に練習する姿を見てきたし」。そして、少しおどけて「抜かされないように頑張りたいなと思います」と笑顔を見せた。

漠然とした将来のイメージはあるが、まずは3週間後の東日本選手権、そして7年連続となる全日本選手権の出場権獲得へ「少しでも構成を戻したい。1カ月くらい前まで、2年前、3年前の自分に近い構成で練習できていた。試合が近づくにつれ、元の調子が悪い自分に戻ってしまったんですけど、今トップにいらっしゃる皆さんと戦えるように構成を戻して上げていきたい」。20歳にもなり、気持ちを新たにしていることは間違いない。【木下淳】