男子は釧路東が2-0のストレートで静内を下し、初出場初勝利を飾った。メンバー全員が中学時代に競技経験がなく、人気バレーボール漫画「ハイキュー!!」に影響された当時の1年生7人が入学時に部を立ち上げ。漫画さながらに全道1勝をもぎ取った。U-18日本代表候補の松井陽輝(2年)を擁する旭川工も白星発進した。

最後に決めたのは、元陸上部のセンター遠藤舜也(2年)だった。第2セット、24-19のマッチポイント。183センチの長身をめいいっぱい伸ばし、相手のスパイクをブロックし、試合を終わらせた。チームで唯一小学生時代にバレーボール経験があるものの、中学ではバスケットボール部だったセッター坂東公也主将(3年)が「うれしすぎ」と、会心の笑みを見せた。

2年半前の春、入学したばかりの坂東が「バレーボール部をつくりたい」と、千葉祐一監督(58)に直訴したところから、歴史が始まった。校内にポスターを貼り、クラスメートに声をかけると、元サッカー部4人とテニス部1人、そして帰宅部1人の6人が加わった。理由は全員「『ハイキュー!!』を読んで、バレーボールがやりたくなった」からだった。

発足当初は、練習中にコンビニに買い物に行ったり、突然バスケットボールが始まるなどの行動は当たり前。「全員が自由人だった」と坂東は言う。元帰宅部でエースアタッカーの葦名大稀(3年)は「週末は家でゲームしたり、寝てたりしてました」と振り返る。

“サボったら罰走”などのノルマができ、初の公式戦となった釧路地区予選で4位に入ると、変化が起きた。元サッカー部の佐藤晴人(2年)は、インターネットで、過去の全国大会で活躍した選手の動画を検索。スパイクの打ち方をまねた。坂東も日本代表の練習動画を見て、メニューを増やし、強化を進めた。

昨年4月の新入部員も、陸上、卓球、野球、サッカー、バスケットボールとバレーボール経験者は0人。それでも今年、初の全道初勝利をもぎ取った。18日の3回戦は一昨年優勝の北海道科学大高が相手だが「(漫画のキャラクターの)アサヒのように、相手のブロックをスパイクでぶち破って勝ちます」と葦名。初勝利から初全国へ、まさに漫画のような旋風を起こす。【中島洋尚】

◆ハイキュー!! 古舘春一原作の高校バレーボールを題材にした青春漫画。週刊少年ジャンプ(集英社)で12年2月から20年7月まで連載。中学校でバレーボールを始めた小柄な少年、日向翔陽が身長の不利を克服し、高校でインターハイや春高バレー、ユース日本代表、Vリーグなどを目指し成長していく姿を追う。テレビアニメはTBS系列で14年から20年まで放送。今年8月、劇場版「ハイキュー!! FINAL」の制作決定が発表された。