バスケットボール女子Wリーグのシーズン途中に選手ら8人が退団したシャンソン化粧品で、一部の選手が心療内科医の診断書を添えて退職届を提出していたことが、10日までに分かった。関係者が明かしたもので、チームトップの川村旭代表(40)による高圧的な言動があったとし、パワーハラスメント被害を主張した。チーム側は、パワハラにはあたらないとの認識を強調している。Wリーグはシーズン中の大量退団を受け、現在、退団選手への聞き取り調査を実施している。

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リーグ優勝16度の名門シャンソン化粧品は2月、元日本代表の藤岡麻菜美ら7選手の退団と李玉慈監督の引責辞任を発表した。プレスリリースでは、その理由について「方向性の違い」と記載したが、チーム関係者の意見は異なる。「選手同士の対立だけが要因のようになっていたが、実際は球団トップの川村代表が、一部選手に高圧的な発言をしたことも大きい」。川村代表はシャンソン化粧品本社の川村修会長の次男で、同社の川村卓史社長の弟にあたる。

昨年12月4日の皇后杯2次ラウンド。東京医療保健大に敗れた直後に選手、監督らによるミーティングが行われた。ここで戦術面や練習態度について激しいやりとりが交わされ、選手間の溝が決定的となった。

その翌日以降の話し合いで、川村代表は特定選手の肩を持つ形で別の選手らを、行きすぎた言動などがあったと非難。解雇の可能性を示唆したほか、選手価値を否定するかのような発言もあったという。

この後の12月下旬に2選手が退団。精神的苦痛を受けたと主張し、心療内科医の診断書を添えての退職届提出もあった。今年1月にはチームの内部分裂を防げなかったとして李監督の退任が決まり、同下旬にはさらに5選手がチームを去った。残ることを選んだメンバーは7、8人ほどの少人数で奮闘し、プレーオフ準決勝まで進出。最後はリーグ2連覇中のトヨタ自動車に敗れ、9日に今シーズンを終えた。

川村代表は、日刊スポーツの取材に対し、選手間の対立が表面化した昨年12月のミーティングについて、十分な調査を行ったと説明。その上で、行き過ぎた言動があったと判断せざるをえなかった一部選手に対して「解雇まで含め、何かしらペナルティーになる可能性がある。結果は追って伝達する」などと伝えたとした。

また、チームの顧問弁護士を務める相川洋介氏は、発言前後の文脈などから川村代表の一連の言葉はパワハラに当たらないと強調。それらの発言が原因で退職に追い込まれたかのような主張は強引で、事実に反するとの見解を示した。

Wリーグは3月に、異例のシーズン中の大量退団に伴い、退団した選手がスムーズに移籍できるよう、自由契約選手として早期公示する特例措置を決定。今月10日に栗林未和の東京羽田入りが発表され、最初の移籍決定選手となった。

また同リーグは退団選手への聞き取りを実施。調査完了時期について、事務局は「未定」とするが、原因解明に努めるとしている。【奥岡幹浩】

◆シャンソン化粧品シャンソンVマジック 静岡市をホームタウンに1962年(昭37)創設。日本リーグ時代を含め16度のリーグ優勝を誇る名門で、90年から99年にかけて10連覇を達成した。全日本総合選手権優勝10回。昨季のWリーグ新人賞で22年W杯日本代表の吉田舞衣らが所属する。