今季のVリーグ1部は女子がNEC、男子は名古屋が制して幕を閉じた。

バレーボール界はここから、パリ五輪出場に向けて男女の日本代表チームが本格始動する。真鍋政義監督(59)率いる女子代表「火の鳥 NIPPON」は、3月27日に登録40人を発表した。そのメンバーから初選出の3選手にスポットを当て、3回連載で紹介。上編は、銅メダルを獲得した12年ロンドン五輪代表の大友愛さん(41)の長女、秋本美空(みく、16=東京・共栄学園高2年)が五輪への思いを語った。【取材・構成=勝部晃多】

   ◇   ◇   ◇

夢の舞台に立つチャンスが早くも訪れた。ロンドン五輪銅メダリストを母に持つ秋本は、言った。「もし(代表メンバーに)選ばれたら、オリンピックで金メダルを取りたい」。コートを離れると、おとなしい印象を受ける高校2年生。だが目標を問われると、正面を見据えて堂々と“母超え”を宣言した。

代表チームに初めて名を連ね、感情はたかぶった。高校生では今回唯一の選出。「誰もがなれるところじゃない。選ばれると思っていなかったのでうれしかった」。五輪予選に出場できるのは、現在の登録メンバー40人から14人に絞られる。今はまだ、チーム活性化のための存在かもしれないが、伸びしろへの期待は大きい。真鍋監督からは「バランスの取れた将来有望選手」と名指しで評された。

メンバー最年少でも、緊張や重圧とは無縁だ。「周りに同じ年齢の人はいないけど、みんな話しかけてくれるから大丈夫」。“勝利を呼ぶワンダーガール”と呼ばれ、19歳から代表で活躍した母と同じ、183センチの恵まれた体。幼いころから衆望を集めてきたが「あまり緊張はしない」という性格も手伝い、結果を示してきた。

共栄学園中3年で全国中学生選抜の認定選手に選出。共栄学園高に進み、1年生でU-18日本代表としてアジア一になった。そして今年の全日本高校選手権「春高」では、エースとしてチームの8強入りに貢献した。母譲りのポテンシャルと、頼もしいメンタル。母を上回る17歳での代表入りも夢ではない。

戦う舞台はトップチーム、世界へと移るが「バレーを楽しむ」気持ちは、競技を始めた小2のころからそのまま。「今を楽しめています。(昔から)出来ないことが出来るようになっていくのがうれしくて。(代表でも)いろんな選手に自分が出来ないこと、やりたいなって思ったことは聞けたらと思ってます」。自分がどれだけできるのか。その挑戦も楽しめている。

5歳の時、ロンドン五輪を現地で応援した。記憶はかすかだが、親戚の家に飾られている日の丸を背負った母の写真は、確かな道しるべになった。その2年後、追いかけるようにバレーをスタート。今は自身の姿を重ね合わせて言う。「家に金メダルを飾れたら、つらい時とかでも頑張ろうってなると思う」。

代表合宿前には、母から「『大変なことはたくさんあるけど頑張ってね』と言ってもらった」という。自身も予想外だった今回の代表入り。「4年ぐらい早かった」と素直に明かしたが、オリンピックという大舞台への思いは変わらない。「春高も無観客だったから、ロンドンみたいな観客の前でやってみたいなって思います」。その瞳には、大歓声の中でプレーする姿が、くっきりと映っている。