女子は就実(岡山)が2年ぶり5度目の日本一に輝いた。決勝でインターハイ、国体との「高校3冠」を狙った下北沢成徳(東京)を3-0のストレートで撃破。「コロナ陽性」で棄権となった前回大会の無念を晴らした。最優秀選手賞は、福村心優美(こゆみ、2年=就実)が受賞した。

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「やったよって。恩返しできたよ。ありがとうって伝えたい」。就実のセッター河本菜々子の頬に、涙が伝った。このコートに立つことができなかった1学年上の先輩たちの姿が浮かび、万感の思いがあふれた。リベロ井上凜香主将とともに3年生のレギュラー。下級生が中心の強力攻撃陣を多彩なトスワークで支え、昨年のインターハイで苦杯をなめた難敵撃破へ導いた。初戦から1セットも落とさず頂点まで駆け上がり、「一番いい恩返しができた」とほほ笑んだ。

河本はあの日のことを忘れない。3連覇を目指した前回大会。直前の「コロナ陽性」で棄権となった。当時の主将で同じセッター岩本沙希が涙した横顔は脳裏に焼き付いている。その先輩は集大成の場がなくなったにもかかわらず、気丈に「頑張るんだよ」と声をかけてくれた。「自分たちが気にしないように接してくれたのだと思う」。引退後も相談や練習に何度も付き合ってくれた。後悔のような言葉は聞かなかった。強かった「憧れの人」の思いも胸に刻み、春高の舞台へと返ってきた。

井上も前主将の思いを背負う1人。昨年まで寮の同部屋だった間柄で、卒業時には2足の試合用ソックスを託された。今大会は先輩の汗が染み込んだ靴下を試合ごとに交互に身に着けた。決勝前日にも、岩本から「明日は全力で頑張って」とエールを送られた。「すごく心強かった」。この日も先輩の靴下で、苦しい時も踏ん張った。

棄権を通達された翌日も、試合出場の望みを捨てず朝6時から試合会場に立った西畑監督。寮の側に住み、自ら選手たちに夕食を振る舞うなど、頂点へ返り咲くべく生活面からも支え続けた。「誰かのための感謝、人への思い。すごく強い力を生み出してくれた」とかみしめた。悲劇を乗り越えるため、日本一だけを見据えて練習に明け暮れたメンバーたち。悔し涙は上がり、虹が架かった。【勝部晃多】

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