柔道のパリ五輪(オリンピック)日本代表(男女14階級)選考で唯一内定が越年していた男子100キロ級で、連続選出を確実にした東京五輪金メダルのウルフ・アロン(27=パーク24)が6日、東京・羽田空港に帰国した。

GSパリで、世界ジュニア王者の新井道大(19=東海大)より上位かつ表彰台が、五輪切符ラスト1枚を逆転でつかめる条件下、新井が3回戦で敗退し、自身は初優勝。スペイン選手を破った瞬間、両手を突き上げ、おとこ泣きした。

涙について「気のせいじゃないですか」と笑いながら「やっぱ安心感。うれしくて泣くことはないので、安心した、ホッとした気持ちだったと思います。(大会前は新井に次ぐ2番手で)立場的にも追い詰められてはいましたけど、そこにモチベーションを感じてやることができていたので、しっかりと受け止めて自分の力に変えることができたことが良かった」と実感を込めた。

6試合を勝ち抜き、大内刈りや内股など世界一になった時の姿を取り戻した。東京五輪後は1度もなかった国際大会の頂点。「オリンピックが終わってから初めての国際大会の優勝だったので、気持ち的に長かったなというところはありましたし、結果が出ないと、やってきたことが正しかったかどうか分からない。1つ、報われた。大きな自信になった」と振り返った。

昨年12月のGS東京は7位。五輪2連覇が消えかけたが、新井が準優勝で止まって命拾いした。背水の陣となったGSパリで最高の結果を残し、今夏の大舞台の雰囲気も現地で予行演習的に体感した。

「柔道という競技の人気度がすごいなと感じたし、オリンピックの時はもっとすごいんだろうなと。応援されてるな、という雰囲気がすごく良かったので、お祭りみたいな雰囲気だったけど、その中で冷静に戦うこともできた。意外と自分に合っているかな」

東京五輪の後は、競技普及のため、あえてメディア出演を過多にした。「芸能人か」と批判もされ、畳に戻った22年から早期敗退を繰り返したものの、最後の最後に1番手へ躍り出た。

今月中旬にも臨時の強化委員会が開かれ、正式に2連覇が懸かるパリ代表に選ばれる。

承認後、電話で届くことになっている内定連絡をどう待つか聞かれると「いつも通りです。YouTube回しちゃうと思います」と笑顔を見せ「人生の最後の目標として五輪2連覇というものがあるので。そこに向かって、もう1段階も2段階もギアを上げて、全身全霊でやりたい」と闘志を高めていた。【木下淳】