男子で神奈川から初出場の立花学園が、歴史的1勝を挙げた。1回戦で北海(北海道)に創部初の全国大会勝利。2-2からの代表戦を庄司篤生(1年)が制した。

唯一、昨年から5人に選ばれているエース田所がポイントを取り、ただ1人の1年生メンバー庄司が中堅戦と代表戦で2連勝。本戦を支え釣り込み足で秒殺(8秒)すると、代表戦も1分36秒で大内刈りの一本勝ち。無心で思わずガッツポーズしてしまい、審判に制される場面もあったほど、うれしい全国1勝目となった。

先鋒  井上陽太 引き分け  夏坂匠平

次鋒 ○田所永伎 反則勝ち ●三和慶冴

中堅 ○庄司篤生 支釣込足 ●岡田惇

副将 ●横山翔太 合わせ技 ○東根央樹

大将 ●渡邊音央 横四方固 ○高橋奏羽

代表  庄司篤生 大内刈り 東根央樹

続く2回戦こそ比叡山(滋賀)に0-4で敗れたものの、念願の初出場から記念すべき初勝利を挙げた。

出場は「事件」とまで呼ばれた快挙だった。神奈川では長く東海大相模、桐蔭学園の2強時代が続いており、過去25年間で2校以外の高校が全国大会に出たのは1度だけ。その牙城を崩し、県予選を準優勝で初めて通過した。8強以上のリーグ戦で創部以来初めて慶応を破ると、準決勝でも桐蔭学園に3-2で競り勝った。

就任17年目の中島慎二監督(43)は「100人を超える応援団が来てくれた。その中で、この舞台に連れてきてくれて、この世界を見させてくれてありがとう」と、まずは部員や保護者への感謝を口にした。

その上で「桐蔭を破ったプライドを持って『必ず全国で1勝しよう』と、チームとしてレベルアップしてきた。正直に言えば、優勝候補(後に決勝進出)の埼玉栄と3回戦で当たりたかったし、真剣に挑んできただけに可能性もあった。だからこそ悔しい」と、感慨深くも本音がこぼれた。

秋の関東選抜大会73キロ級で準優勝した田所は「今の実力は全て出せた。これまでは出場が目標だったけれど、次はいくつ勝てるか。団体はもちろん、次は個人でも全国に戻ってきたい」と闘志を新たにした。

02年の講道館杯や06年の全日本選抜体重別で優勝した庄司武男を父に持つ100キロ級の庄司は、親譲りで変則の背中を狙う組み手から豪快に2度の1本を奪った。中学時代も全国大会に出場。父の母校である埼玉栄をはじめ、県内外の全国常連校から誘いもあったが「自分の特殊な柔道を、中島監督は尊重して自由にやらせてくれる」と立花学園を選び、新入生ながら代表戦を任された期待に結果で応えた。

その中島監督は、長野県飯田市の鼎(かなえ)柔道クラブから東海大三高(現・東海大諏訪高)を経て東海大に進学。2学年上で、シドニー五輪(オリンピック)男子100キロ級の金メダリスト井上康生の付き人を、ALSOKを退社する06年まで務めた。

07年、立花学園の監督に就任。着実に強化し、県8強から近年は関東大会に7年連続で出場する強豪に育てた。ただ、大きかった差を詰め、遠かった全国に初めて到達。「柔道は番狂わせが起きにくい。団体戦なら、なおさら。その中でチーム一丸となって、全国的にもレベルの高い神奈川で奇跡を起こせた。大金星。夢がかなった」という激戦区突破に導いた。この日は悔し涙の渡邊音央(2年)が、体重無差別の中で66キロ級ながら、桐蔭学園戦で相手エースから白星をもぎ取ったことも大きかった。

4月で18年目に入る前の宿願成就に、中島監督は「初めての全国で1勝できたことを、心からうれしく思う」と感無量の表情を見せた。「監督として最も大事なことは、選手のモチベーションを上げること。生徒の自主性を重んじ、いかに楽しいと思わせるか」という指導理念が実った。井上陽太も横山翔太(ともに2年)も持てる力は出した。

涙の選手たちには「仲間やマネジャー、支援してくれた方々の思いも背負った分、悔し涙が出たのかなと思う。この経験が、全国ベスト8以上を目指す今後に生きる」とねぎらい、円陣で熱く伝えた。

信じた道が大舞台につながった一方、出て初めて分かった課題もある。未到だった領域で得た経験を磨き、新年度へ。次は勇躍、今夏のインターハイ(全国高校総体)初出場を目指す。【鼎柔道クラブ同期=木下淳】