男子は埼玉栄が初優勝した。ともに僅差の1-1からの代表戦に、昨夏2年生でインターハイ100キロ級王者になった平野匠啓が登場。決着がつくまで時間無制限のゴールデンスコア(GS)方式で迎えた1分55秒、大内刈りで足立学園(東京)の鏑木克優(2年)に一本勝ちした。

昨年12月の国際合宿で右肘を脱臼。約1カ月前の2月下旬に復帰したばかりだったが、大会を通じて失点なし。準々決勝では昨年度「全国3冠」の国士舘(東京)に4-0で圧勝した。その中で自身は、前日の100キロ超級で4強入りした125キロの国士舘エース山本由聖(2年)と引き分けて「相手も強かったので、そこから徐々に力が入り始めた」と復調した。

負傷の影響で予選に間に合わず、個人戦には出られなかったが、団体戦に懸けていた。本来の姿を取り戻した決勝では、本戦の副将戦で足立学園の最重量115キロの中谷雅夢に僅差で勝利。引き分け3で回ってきた後、初めてのリードをチームにもたらした。

大将戦で1-1に追いつかれて迎えた代表戦では「「来ると思っていたので、勝つしかない、やってやるぞ、と思っていた。誰も成し得ていないことを自分で決めたかった」と闘志を最大値に。階級こそ相手が90キロ級で下ながら、国際大会(ドイツ・ブレーメン)や東アジアユース大会の金メダルを持つ鏑木との主将対決を制した。悲願の頂点に立ち、仲間に担ぎ上げられた平野は「目標は『全国3冠』。金鷲旗もインターハイも勝ちたいし、自分たちの代ならできる。個人もインターハイ2連覇が懸かっているので達成したい」と燃えた。

28年ロサンゼルス五輪(オリンピック)の星で、今夏パリ五輪代表の座も最後までウルフ・アロン(21年東京五輪金メダル)と争った新井道大(東海大1年)は「超えたい」OB。その2学年下で胸を借りてきた平野が、先輩も届かなかった日本一にチームを導き、大会最優秀選手にも選ばれた。【木下淳】

<埼玉栄-足立学園>

先鋒  堀  悠隼 引き分け  荒川琉正

次鋒  饒平名和貴 引き分け  嶋貫 蓮

中堅  渡邊 蒼織 引き分け  鏑木克優

副将 ○平野 匠啓  僅差  ●中谷雅夢

大将 ●北村 斗麗  僅差  ○宮部蓮匠

代表 ○平野 匠啓 大内刈り ●鏑木克優

▽先鋒・堀「自分が流れをつくりたかったので。物足りない部分もあったんですけど、悲願の初優勝。うれしいです」

▽次鋒・饒平名(よへな)「(準決勝までは全てポイントを挙げて)うれしいです。3冠を目標に掲げているので、次は金鷲旗を取ります」

▽中堅・渡邊「先輩たちと頑張ってきました。自分の柔道、取りに行く柔道を持っているので、これからも続けていきたい」

▽副将・平野「絶対、勝ってやると思っていたので、良かったです。決勝まではみんなに助けてもらったんで、決勝では絶対に自分が決めてやると思っていました。私生活から、柔道の練習中から、全て引き締まってやれていたので、その成果が出たかなと思います」

▽大将・中村「自分が引き分けていれば勝てた試合。(平野の一本勝ちに)主将として助けてくれました。ここに向けて必死に練習してきたので良かったです」

▽2回戦まで出場の中村成寿「まだ目指すものがいっぱいあるので、インターハイ、金鷲旗に向けて頑張りたい」

▽川原篤監督「もう(最後まで)信じて。1人1人が全力で戦ってくれて全員で勝てました。絶対に失点したくなかった。子供たちが生活から稽古からしっかりやっています。今日、結果に表れたと思います。部員や保護者、全員が日本一を目指してきたので、全員の力で勝てました」