激戦の男子200メートル平泳ぎで、元世界記録保持者の渡辺一平(27=トヨタ自動車)が2大会ぶりの五輪代表に内定した。2分6秒94で優勝し、22年世界選手権銀メダルの花車優(イトマン東京)が2分7秒07で続いた。“鉄道マン”深沢大和(東急)は2分7秒75で派遣標準記録(2分8秒48)突破も3位で無念の涙を流した。男子200メートルバタフライは日大3年で1位の寺門弦輝(セントラルスポーツ)、21年東京五輪銀メダルで2位の本多灯(イトマン東京)がパリ切符をつかんだ。

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渡辺が悔しがった。日本記録まで、あと0秒54。2分6秒台や五輪切符の喜び以上に「5秒台も視野にレースを進めた。正直、もっと出せると思った」と唇をかんだ。実力者ぞろいの決勝。レース前には、ハイタッチで互いに最高の泳ぎを誓い合った。スタートから1度もリードを許さなかった身長193センチの男は、パリへ向け「世界の選手に、渡辺一平が強くなって帰ってきたというところを見せたい」と力強く誓った。

8年前、初出場のリオデジャネイロ五輪で6位入賞。翌17年に世界記録を樹立したが、21年東京五輪は選考会で落選した。「競泳人生で一番の挫折。やめようと思ったことも、正直あった」。22年秋からは、12年ロンドン五輪銅メダルの立石諒を指導した高城直基コーチに師事し、見える景色は変わっていった。

練習では急成長中の深沢、渡部香生子と高め合い、泳ぐ楽しさも思い出した。04、08年と北島康介氏が五輪2連覇を飾った平泳ぎ。目標は明確だ。

「自分自身がお家芸と言われる種目を復活させたい。ダブル表彰台、金メダルを目指して、勝負したい」

過去の悔しさ、ライバルの思いを背負い、パリに全てをぶつける。【松本航】