次は婚活だ!

 ロンドン五輪の柔道女子78キロ超級で銀メダルを獲得した女子重量級のエース、杉本美香(28=コマツ)が14日、都内で現役引退を表明した。出場資格を持つ来年4月の全日本女子選手権(横浜)も辞退し、今後はコマツのコーチとして後進の指導にあたる。ただ、人生の次の目標に掲げたのは柔道よりも?

 大事な私生活。「30歳までにお嫁さんになりたい」と宣言し、得意料理などセールスポイントを挙げて、婿探しに励みだした。

 涙はなかった。いや、笑いの方が多かった。杉本が臨んだ引退会見。両膝の前十字靱帯(じんたい)を断裂するなど幾度となく大けがを負った。満身創痍(そうい)の体。壮絶な柔道人生だったからこそ「体には『今まで頑張ってくれて、ありがとう』と言いたい。痛めつけてきたので、これからは休ませてあげたい」と自身をねぎらった。両親にも「ありがとう」と感謝した。ただ、しんみりしたのは、このくらいだった。後はもう、“らしさ”満載の明るい引退報告だった。

 次の目標は?

 こう聞かれて、迷わず出た言葉は「お嫁さんです」。柔道に関する目標を想定していた記者らが「えっ?」と固まると、すぐに反論。「女性なら、誰もが夢見ることじゃないですか~」。遠い目をしながら「30歳までに結婚したい。でも、柔道だけだったので、どう婚活したらいいか分からない。力ずくですかね」とおどけた。

 ただ、表情も口調も真剣だった。セールスポイントには「料理ができます。ゆで卵が入ったハンバーグが得意」とアピールし「あとは…(男性を)守ります」と、国民栄誉賞を受賞したレスリング吉田沙保里ばりに宣言した。理想のタイプは「家庭を大事にする旦那さま」から、俳優のつるの剛士。「誰かいないですかねぇ」と待ち望んだ。爆笑会見に変わっていた。

 柔道は「ロンドン五輪でやりきった」という。来年に右膝靱帯の再建手術を受けて、コーチとして後進を指導していく。ただ、自身が指南されたいのは婚活の仕方。明るい家庭が生まれるのは間違いない。その日に向かって、第2の人生が始まった。【今村健人】

 ◆杉本美香(すぎもと・みか)1984年(昭59)8月27日、兵庫県伊丹市生まれ。11歳から柔道を始める。汎愛高-筑波大を経てコマツ所属。10年世界選手権78キロ超級、無差別級で2冠。全日本選抜体重別選手権は09年から4連覇。11年全日本女子選手権初優勝。今年のロンドン五輪は銀メダル。得意技は払い腰。家族は両親と姉。165センチ、100キロ。血液型A。