<全国高校バスケット選抜優勝大会:能代工93-82東海大四>◇第4日◇26日◇男子3回戦◇東京体育館

 能代工(秋田)が復活だ!

 過去優勝20度の伝統校が、東海大四(北海道)に逆転勝ちし7年ぶりの8強入りを決めた。1、2回戦で不調だったC荒木直やPG長谷川暢主将ら3年生が本来のプレーを見せ、最大11点差をひっくり返した。現チーム初の全国3勝を挙げ、選手は歓喜の涙を流した。

 「ただ勝ちたくて…」。試合終了のブザーが鳴ると同時に、長谷川主将は思わず両手で顔を覆った。「やっとここまで来た」と、涙があふれて止まらなかった。最大11点差を逆転した。OBで就任7年目の佐藤信長監督(44)にとっても初の8強入り。昨年の大会、夏の総体ともに初戦敗退の悔しさを味わった能代工が、センターコートで輝いた。

 誰よりも苦労してきた2人の3年生が意地を見せた。2回戦まで出場のなかった198センチの荒木が、第1クオーター(Q)途中でコートイン。長身を生かして3連続得点するなど、第2Qだけで12得点をマークして流れを作った。「しっかり準備してリングに向かっていけました。初めてのメーンコートなのでうれしい」。

 県大会前に後輩にポジションを奪われた上、今大会直前には鉄分が異常に不足する体調不良に陥った。だが長谷川主将からの「お前しかいないんだ」という励ましなど、仲間の支えで復活した。「誰より厳しく練習させた」と1000本シュートに付き合い、体調不良時はレバーたっぷりの“根性丼”を食べさせたという杉沢政部長も、この日の荒木の活躍に「こんな日が来るなんて。涙が出た」と目を細めた。

 一方の長谷川も「今まで悩まない日はなかった」。伝統校の主将として、プレッシャーに押しつぶされそうになりながら過ごした1年だった。それでも高校最後のウインターカップを前に、昨年3年生のOBに「借りを返してきます」とメールで宣言。前日の2回戦まで思ったようなプレーができず「後輩に頼りっぱなし」と落ち込みもしたが、佐藤監督の「初心に帰れ。試合を楽しめ」の言葉に自分を取り戻した。この日コート上では仲間を落ち着かせる言葉をかけ続け、能代工らしい伝統のパス回しでチームを勝利に導いた。

 今日27日の準々決勝は夏の総体を制した福岡大大濠と対戦する。自信をつけた長谷川は「向かっていくだけです」と、10年ぶりの頂点を見据えた。【成田光季】