全国大学ラグビー選手権(12日決勝、東京・秩父宮)で初優勝を目指す天理大が11日、明大との決勝戦に向けて奈良・天理市内で約1時間の最終調整を終えた。練習前には小松節夫監督(55)が「集まってきよったなあ」とつぶやき、グラウンド脇に並んだ教え子たちを見つめた。

前日10日の夕方に最後の全体練習を終え、この日の調整は明大戦出場メンバーのみに限定。だが、授業のない控え部員たちは、そろって午前9時からの練習に参加していた。タッチラインの外から一挙手一投足をじっと見つめ、時折メンバーに声をかける。練習の終盤には「さあ、タックルいこう!」という声が、自然と発せられていた。

決勝の舞台は11年度以来、7大会ぶり2度目。7年前は年末で解散し、試合メンバーだけで仕上げていく方法を選んだ。Aチーム(1軍)から外れた選手たちは、例年11月下旬に閉幕するジュニアリーグ(Bチームの公式戦)を最後に対外試合の機会が無くなる。メンバー外の下級生は次年度以降に向けた体作りに重きを置き、年明けから4年生をフリーとしていた。

その冬、決勝で戦った帝京大に12-15で敗れた。同じ指導者として「すごいな」と見つめる帝京大の岩出雅之監督(60)に尋ねると「うちは(決勝まで)全員でやっているよ」と返ってきた。控え部員のモチベーションを考慮すれば難しい判断だったが、7年の時を経て、今季は決勝直前まで部員全員が同じ時間をグラウンドで共有した。

小松監督は「今のBチーム、いつでも試合できますよ」と真面目な表情で口にした。自分自身に目標がなくても、天理大としてつかむ日本一のために、控え部員たちは実戦的な練習で体を張った。指導者が強制することなく、決戦前日のグラウンドには自発的に授業のない部員が集まった。

現時点で翌日の結果は分からない。それでもフッカー島根一磨主将(4年)は「みんなが集まってくれたのはありがたかった。チームが1つになって戦う。それができたら、勝てる」と言い切った。思いを託されたメンバー23人は午後、一足先に決戦の地・東京に乗り込んだ。【松本航】