「日本一の主将」が、みちのくで2年後のプロ入りを目指す。東京6大学リーグの4年生の進路が、16日までにほぼ出そろった。早実主将として06年夏の甲子園で優勝した早大・後藤貴司内野手(4年)は、社会人野球の日本製紙石巻(宮城)に進む。早実Vメンバーで野球を続けるのは、日本ハム1位の斎藤佑樹投手(22=早大)と2人だけ。今夏都市対抗に初出場したチームで、飛躍を期す。

 後藤が放った意地の一打が、左前に抜けた。初の日本一に輝いた11月の明治神宮大会決勝。途中出場し、1点リードの7回2死走者なしの打席で、東海大・菅野智之投手(3年=東海大相模)の直球をとらえた。今秋のリーグ戦は無安打と苦しんだが、大学野球最後の試合で、来秋ドラフトの目玉右腕に食らいついた。

 斎藤とともに、4年間で4度のリーグ優勝を経験した。内野はすべてこなすユーティリティープレーヤー。だが、最後の1年間は出場機会が減った。「甲子園では優勝したけど、大学は満足できない。自分の力が出し切れなかったモヤモヤがあります」と言う。

 新天地は、これまで縁がなかった東北に求めた。仙台から鈍行電車で約1時間。海産物が有名な太平洋沿岸の石巻市は、冬場氷点下に冷え込む。「ずっと東京でやってきて、悪い言い方をすると、飛ばされたみたいな感じがある。社会人野球で一旗揚げたいです」。

 斎藤は北海道で生活する。「みんな北だな」と笑い合った。早実Vメンバーで野球を続けるのは、2人だけ。「大学の最後は早実のみんなで優勝したかったけど、みんな辞めちゃいましたから」と寂しい思いを力にする。

 課題は打撃として、今は走り込みを中心にトレーニングを続ける。日本製紙石巻は、今夏の都市対抗に初出場した。「牛タンがおいしかったです。仙台にはマー君もいますから」。胸に秘める思いは2年後のプロ入り。夏の甲子園決勝で破った楽天田中に続き、7年間ともに戦った斎藤がプロに進む。後藤は、みちのくの地で夢を追う。【前田祐輔】