DeNA平良拳太郎投手(21)が運命を乗り越え、プロ初勝利を挙げた。巨人での4年目を迎えるはずだった。そのために昨オフ、入団当初から慕う内海と一緒に、沖縄自主トレに励んでいた。「本当に内海さんは何歳なんだろうっていうくらい走ります。こんなにも走るのかと思いました。でもこれだけ走らないと内海さんのように結果を出せないんだと感じさせられました」。先輩に追いつくために体にむち打って追い込んでいた1月4日、1本の電話で人生が変わった。

 昨季までDeNAに所属した山口俊のFA移籍にともない、人的補償で移籍が決まった。戦力として期待されての指名であることには、違いない。しかし突然の移籍。あらがうことができない運命に「驚きました」という言葉は、まさしく本音だろう。「巨人にいたときよりも、いい投球ができるようになったと思われるようにしたい」というのも、受け入れるために言い聞かせた言葉だろう。移籍決定直後には、山口俊から直接電話を受け「お互い頑張ろう」と声を掛けられたというが、気持ちの整理をつけるには、時間も精神力も要しただろう。

 だからこそ、中日戦(5月10日)での初勝利は、大きな1勝だったと、勝手に思っている。山口俊よりも先に勝利を挙げ「ライバル意識なんて言っちゃいけない。(意識は)特に何もないですよ」という言葉も、勝ったからこそリアルに感じる。ただ勝つために、ただチームのために、それだけを考えてきた4カ月間だったと察する。そんな21歳の覚悟が、間違いなくDeNAを強くすると信じている。【DeNA担当=栗田成芳】