久しぶりの鳴尾浜球場である。今年は寒かったこともあって新人の自主トレに顔を出さなかったが、もう“3月”だ。ウエスタン・リーグの練習試合(教育リーグ)が始まった。今シーズンもさまざまな話題を掘り下げていきたいと思っている。早速、グラウンドに目を向けたり、阪神掛布監督を取材していると沖縄の宜野座、高知の安芸に分散したメンバーが、過去に例のないように分けていたのに気がついた。

 「これでよかったのか…」。疑問に思ったのが2軍キャンプだった。野手は総勢で12人だったという。少数精鋭、考えようによっては、たっぷり中身の濃い練習ができたと思われがちだが、キャンプでは投手と内野手、内野手と外野手の連係プレーをみっちりやるのが恒例となっている。チームプレーは右に左にかなり動きが激しく、繰り返し行われるので少人数の場合ケガ人が出る恐れがあって怖い。同監督も「中堅の選手が多く、人数が少なかった分、ケガ人が出ないか心配だった」とキャンプを振り返ったが、キャンプの狙いはどこにあったのか-。

 単純に考えるなら、1軍の首脳陣が「若手の力量を把握しておきたかった」からだろう。掛布監督も「中堅クラスの力はわかっているので、若手を見てみたかった」の方針だとみているが、私が考えるに、それだけではないような気がしてならない。

 チームの戦力アップ、なかなか思うにならないことだが、手っ取り早いチーム力の底上げを熟慮してみると、意外に身近なところに答えはあった。シーズン中、常に戦力として1軍のベンチ入りしている選手だ。昨年はどうだったのか。確かに若手が力をつけて1軍で活躍した時期はあったが、1シーズンコンスタントに力を発揮するまでにはいかなかった。その点、元々力のある1軍半的な選手がレベルアップするなら、レギュラーに匹敵するほどの活躍が期待できる。果たして、新井がどこまでの力をつけたか。スイッチヒッターに変身した大和はどうか。そしてベテラン狩野が桧山につぐ“代打の神様”になれるか。安芸でドロまみれになった選手に注目したい。

 2軍のキャンプを中堅主体にした意図はあったのか。1、2軍首脳陣の間でしっかり打ち合わせをして方針を打ち出したのか。掛布監督「別に意図だとか、方針があってのことではなくても、1軍半的な選手が力をつければチーム力は底上げされるし、戦力アップは当然のことですから。まあ、例年にないメンバーだったので、少々雰囲気はかわっていましたし、少人数でしたのでやり過ぎないように気をつかいましたが、バッティング、フィールディングなど個人技の練習は十分足りていると思います。ただ、大和なんかはスイッチヒッターになったところだったので、かなり打てましたし、バットを振ることができましたのでよかったと思いますね」すべて心得たうえでのキャンプだった。

 キャンプでも新時代到来かな、結果がどう出るか。答えはシーズン終了後でないとわからないが、チームの方針は方針として、こうした一風かわったキャンプを張るときは首脳陣の間だけでもしっかり話し合っておくことが、練習の中での指導にも必要なはずだ。月日がたつのは早い。つい先日キャンプが終了したと思ったら、もう3月17日からウェスタン・リーグの公式戦が開幕する。私の鳴尾浜球場通いが始まる。若手のはつらつとしたプレー。いまから楽しみだ。

【本間勝】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「鳴尾浜通信」)