みちのくの高校野球界を沸かせた球児たちが、次のステージへ羽ばたいていく。大リーグ・マリナーズなどで活躍した佐々木主浩氏(日刊スポーツ評論家)の長男で東北(宮城)の投手だった佐々木彰吾は、東北福祉大のゴルフ部に進む。甲子園出場の夢はかなわなかったが、父とは違う形でプロを目指す。

 思いもよらぬ決断に、友人たちは一様に驚いたという。「え、野球じゃないの?」。佐々木の進学先は、大魔神と呼ばれた父主浩氏の母校・東北福祉大。高校、大学と同じ道を歩むが、選んだのは野球部ではなくゴルフ部だった。「新しいことに挑戦したかったんです」。すでにグラブをクラブに持ち替えて、練習に励んでいる。

 大リーグでもクローザーとして活躍した父に憧れ、東京の実家を離れた。父の代名詞でもあったフォークも独学で身につけたが、東北に来てすぐに右肘を痛めた。昨春の地区大会でようやく公式戦デビュー。夏もリリーフで1試合マウンドに立っただけだった。父が8強まで勝ち進んだ甲子園にも出ることはできなかった。でも、不思議と後悔はない。「大した結果も出してないけど、同じ縦じまのユニホームを着て公式戦で投げることができたのは誇りに思っています」。

 実は、ゴルフ初心者というわけでもない。「いつもコースに行ってた」という父に連れられ、小2の時に米シアトルで初めてクラブを握った。中学時代は野球に軸足を置きながら、週2回は練習場でレッスンを受けていた。ベストスコアは80。ドライバーの飛距離は280ヤード近いという。今年1月に家族旅行でハワイを訪れた際には、アマゴルファーとして初めてマスターズに出場した松山英樹と対面した。「大学の先輩にもなるし、憧れの人。アプローチとかを教えてもらいました」と目を輝かせた。

 もちろん、甘い世界でないことも分かっている。「個人競技で自分が試されるし、大変だと思う。でも、やるからにはプロを目指したい」。父と同じ「プロの世界」で戦うため、大学ゴルフ界の名門で腕を磨く。【今井恵太】