阪神が3連勝発進で交流戦単独首位や。「日本生命セ・パ交流戦」の楽天3回戦。延長11回にベテラン福留孝介外野手(38)が2日連続のサヨナラ打点となる押し出し四球を選んだ。球団創設5000勝の節目白星で、リーグ3位に浮上した。気がつけば借金は1。さあ今日で完済や!

 虎党の喜怒哀楽を、4時間40分以上も感じてきた。時刻は午後10時40分を過ぎていた。延長11回2死満塁。福留にとって申し分のない舞台が整った。

 「できれば決めて欲しいと思っていました」

 目の前で3番マートン、4番ゴメスが一塁へと歩いた。2死二塁が満塁となり、前夜サヨナラ弾を見舞った楽天戸村は明らかに動揺していた。セットポジションをワインドアップに変えて、必死にストライクを取りに来る。だが、ボール。ボール。ボール。カウント3-0で福留は優位に立った。2球のストライクを経てフルカウント。最後の1球は、わずかに外れた。どちらに転んでもおかしくない判定に「俺は何も言えないよ」とつぶやいた。押し出し四球。借金1とする2夜連続のサヨナラ勝利は目で奪った。

 「勝ったこと。それに落ち着くんじゃないですか」

 クラブハウスに引き揚げる際には「今日は荒木!」と殊勲の後輩へ気を配った。どう喜べばいいかがわからなかった。それでも福留の選球眼がなければ、起きなかったサヨナラだ。今では珍しくなくなったサングラスの装着。それを長年、デーゲームではウオーミングアップから、日中の移動中にも付ける習慣を続けてきた。「目をやられると選手生命が変わってしまう」。少しでもダメージを減らそうと努力した結果が、38歳の今だ。リーグ2位の28四球にも少なからず影響があるはずだ。

 以前、オフのトークショーで福留はこんなことを言った。「一番、ライトスタンドに近いところで守っているんだから、(ファンの感情を)一番分かっている」。お立ち台では押し出し四球を選んだ瞬間を聞かれ、いたずらっぽく答えた。

 「早く帰れると思いました」

 何度も好機を逃し、裏切り続けたファンの気持ちも察したのだろう。6回の適時二塁打を含めて6試合連続の打点。たどりついたのはチーム通算5000勝。

 「そういう中で勝つことに貢献できたのはすごくいいこと。これからもまだまだ続くので、もっと積み上げていきたいです」

 今季阪神では最長の4時間44分ゲーム。ファンと福留の信頼関係は、また濃くなった。【松本航】

 ▼福留が押し出し四球を選んでサヨナラ勝ち。福留は前日もサヨナラ本塁打を放っており、2試合連続で「サヨナラ打点」は12年バルディリス(オリックス)以来。阪神では2リーグ制後、80年5月24、27日竹之内(単打、本塁打)85年9月15、16日岡田(本塁打、単打)に次いで30年ぶり3人目。相手投手は2日連続で戸村だが、同一投手から2試合連続サヨナラ打点は、68年8月24、25日に豊田(サンケイ)が山中(中日)から2試合連続代打サヨナラ本塁打を放って以来47年ぶり。

 ▼阪神の2試合連続サヨナラ勝ちは、今季の開幕1、2戦目の3月27、28日中日戦(京セラドーム大阪)に次ぎ2度目。甲子園に限ると、08年9月9~11日ヤクルト戦に3試合連続で記録して以来、7年ぶり。また同一シーズンに2試合連続サヨナラ勝ちを2度は、01年(6月20、21日巨人戦、7月14日中日戦、17日巨人戦)以来、14年ぶり。

 ▼阪神が交流戦開幕から3連勝は、05年の導入後初。楽天には過去3シーズン(12~14年)に2勝10敗、甲子園では12年5月19日から6連敗していたが、一気に苦手意識を一掃した。また今季同一カード3連戦3連勝は、3月27~29日中日戦(京セラドーム大阪)、4月28~30日ヤクルト戦(甲子園)に次ぎ3度目。