阪神が8月8日から守った首位の座を明け渡した。先発岩田稔投手(31)の独り相撲で完敗だ。3回、投前のゴロを一塁へ悪送球。この日2個目の失策から先制点を許し、6回は四球連発から追加点を献上し6回途中2失点の自滅負け。広島黒田を相手に、ミスしちゃあ勝てない。代わってヤクルトが単独首位。残り17試合、虎の底力が試される。

 和田阪神が1カ月以上も守ってきた首位の座を明け渡した。先発岩田が大誤算だった。敗戦後、指揮官は厳しい表情でこう言った。

 和田監督 点の取られ方が悪すぎるな。自分で自分の首を絞めるというか。

 指摘通り、自滅のような崩れ方だった。初回、岩田は先頭の丸のセーフティーバントに対し、処理を焦ったのか、一塁へワンバウンドの悪送球。ここから苦心の投球が始まった。2四球を与えて満塁のピンチは何とかしのいだが、3回には再び自身のフィールディングミスによる悪送球から得点圏に進まれ、エルドレッドに先制打を浴びた。

 そして、6回には2死二塁から8番石原を敬遠。追加点を与えたくない場面でなんと投手黒田に四球。再び満塁とされると、丸の内野安打で痛恨の2点目を失った。6回途中まで3度も満塁のピンチを背負い、2失策に、5四球。まさに独り相撲だった。

 中西投手コーチ フィールディングだよ。きっちりそういうことができないとああなる。投球に出てくるんだよ。その、甘さが。

 優勝争いの正念場にきてミス連発。守りからリズムをつくるどころか、常に劣勢の雰囲気で戦わざるを得なかった。

 和田監督 (打線への影響は)それと、これとは離して考えていかないといけないんだけど…。

 指揮官は言葉をのみ込んだが、とても一丸となって黒田攻略に向かうムードではなかった。

 岩田 走者を背負っていても、どんどん攻めていくんだという気持ちで打者に向かっていったのですが、抑えられませんでした。

 岩田のコメントに無念さがにじんでいた。4本柱の一角が、ここにきて3連敗。相手はすべて広島。鯉キラーとして、ぶつけてきたが、返り討ちにあっている。重圧を感じながらの9月戦線、投打ともに硬さがあるのか。その問いに指揮官はこう言い切った。

 和田監督 これからの戦いはそうなって当たり前だと思うし。これから17試合いろいろなことが起こる。どんな状況になっても常にここからという気持ちで戦っていかないといけない。

 追う立場となったのは夏真っ盛りの8月7日以来だ。首位ヤクルトに0・5差。ここでズルズルと後退するわけにはいかない。今季は何度も踏ん張ってきた。

 和田監督 その通り! ここから! 

 将は吹っ切るように言い残して、会見を締めた。猛虎の真価が問われるのは、ここからだ。【鈴木忠平】

 ▼阪神が8月8日から座り続けた首位の座を明け渡した。34日間1位だったが、前日10日巨人戦●でヤクルトに並ばれ、11日広島戦●で、この日試合がなかったヤクルトに上に行かれた。首位の間は6連勝が1度、3連勝が2度あったが、2度の3連敗もあった。8月16日に2位ヤクルトに最大3・5ゲーム差をつけたものの、その後に下位チームを突き放せなかった。

 ▼残り20試合を切った時点で首位から陥落後、阪神が逆転優勝した例は64年にある。ちょうど51年前9月11日、広島に1-6で完敗し、残り14試合で首位から転落。この後、なかなかトップに返り咲けなかったが、残り3試合で迎えた同29日国鉄戦で首位に立ち、翌30日の中日戦ダブルヘッダーも連勝して優勝。9連勝でフィニッシュした。藤本定義監督。