この新人、ただ者じゃない。阪神ドラフト1位高山俊外野手(22)がプロ初打点をV打で決めた。3回1死一塁で、右中間を真っ二つ。会心の二塁打で先制点を生んだ。プロ6打席目でさらりと大仕事をこなし、初めて「勝利のお立ち台」にも登場。いやもう、自己紹介を聞くまでもなく、阪神ファンはみんな君のこと知っとるで。
猛虎色に染まったパノラマビューの景色に、高山は酔いしれていた。プロ初打点が決勝打。金本阪神に初勝利をもたらした1年目のヒーローは、かみしめるように勝利の喜びを語った。
「すごかったですね…。今日に限らずもっとチームの勝ちに貢献していきたいなと思えました。勝つとこんなにいいもんなんだと分かりました」
先制適時二塁打は、試合を動かす一打となった。3回1死一塁。山井の内寄り高め139キロ。芯で捉えたライナー性の打球は、すさまじい速さで右中間を割っていった。常に平静な男が珍しく、二塁上でパンッと手をたたいた。6回には、三塁手高橋が後ろにそらし左翼前に打球が転々とするのを見て、ちゅうちょなく二塁を陥れた。
「よく感覚でやっているとかそういうことを言われるんですけど、そんなことはないです。それだけの努力をしてきたつもりです」
いとも簡単に安打を重ねる姿に、ファンや周囲からは「天才」と呼ぶ声も聞かれる。しかし、そんなことはない。努力を重ねてきた自負がある。ドラフト後も、昨秋の右手有鉤(ゆうこう)骨骨折の遅れを取り戻すため、とにかくバットを振ってきた。右手のひらには大きな血だまりができたが、構わずバットを振った。振り続けた。春季キャンプでは、練習後の宿舎でも素振りを続けた。負傷明けの身ながら1日計1000スイングを超えることもあった。打撃用手袋に隠れた、ボロボロになった手の皮と黒く変色した血だまりが、努力の結晶だ。
「僕は一生懸命やるだけなんで。バットを振らないとうまくならないですよ。そんなに甘くないですよ、野球って」
早くもプロ2戦目で登った、初めてのお立ち台。こんな一幕があった。ファンでふくれあがったドームの感想を問われ「いやあ、本当に最初はすごい驚いたんですけど…」。スタンドから「だからー! 声が小さい!」と声が飛んだ。恥ずかしそうに笑みを浮かべると、おなかに大きく息を吸い込み、メッセージを送った。
「本当にありがたいです! もっと応援してください!」
今後定位置ともなりえる台上で思わぬ宿題が見つかったが、「努力家」の高山なら超変革するだろう。【梶本長之】
▼高山が開幕第2戦に、決勝打となるプロ初打点。阪神のドラフト最上位入団野手が挙げた打点としては、69年田淵幸一(法大)のチーム3戦目(4月13日大洋戦3打点)を上回り、最速となった。また、阪神のルーキーが開幕から10試合消化しないうちにV打を記録したのは、同年の田淵に次いで2人目。田淵の初V打は開幕5試合目の4月19日中日戦で、「開幕カードのV打」、「チーム初勝利のV打」はともにドラフト制後の新人では球団史上初めて。



