東北約900万人のファン獲得を目指し、楽天が地域密着活動を続けている。今季も、規格を満たす球場のない青森を除く5県で1軍公式戦を行う予定で、2軍戦の開催は東北6県14球場に拡大した。楽天の立花陽三球団社長(45)は日刊スポーツのインタビューに応じ、東北での1軍主催試合全てを満員にしたいと誓った。
楽天が東北全域で継続してきた地域密着活動が、観客動員数という形で1つの実を結びつつある。昨季は主催71試合で152万4149人を動員。1試合平均2万1467人との両方で球団新記録を樹立した。約30億円を注ぎ球場を大改修した今季は「1試合平均2万2000人」を目標に掲げる。立花社長は1人でも多くのファンを獲得することが、「東北」楽天ゴールデンイーグルスの使命と強調する。
立花社長 チームに東北という名前をつけさせていただいた以上は、東北エリアのお客様が全部うちのファンになってほしい。だからできるだけ東北で試合をしたい。子供たちを含めた皆さんの前で1軍戦を行い、「これが本当のプロスポーツだ」という試合を見せていくことは1つの義務。仙台の人口は約100万人、宮城で約200万人。東北の約900万人を巻き込んでいきたいんです。
将来を見据え、芽を育ててきた。12年の社長就任直後、社内プロジェクトの「東北ろっけん活動」を発足。球団が講師を派遣して行う「野球塾」などの開催に加え、東北6県の夏祭りにも球団職員総出で参加。機を見ては、積極的に仙台から東北へと足を運んだ。14年には、6県の新小学1年生に対してイーグルスキャップのプレゼントを開始。約7万人に無料配布するのは球界初の試みだった。多くの地域密着活動は、今や球団の行事として定着しつつある。
立花社長 ようやく、こうした活動が日常のようになってきましたね。ただ、子供たちが「僕らはチーム楽天だ」と言ってくれるまでには30年くらいかかると思う。5年や10年で、例えば巨人ファンの方が簡単に変わってくれるとは思っていない。10年、20年先を考えた上で、何ができるかなんです。
全てのファンを喜ばせるために、各県で行う主催試合にはこれでもかと工夫を凝らす。昨年7月の秋田開催は「こまちスタジアムで夏まつり」と題し、試合終了後に約3000発の花火大会、「世界のビールと肉まつり」などのイベントを催した。興行そのものを現地の買い手に売る「売り興行」は行わない。赤字のリスクが存在しても、準備、運営の全てを球団内で完結させる方式にこだわる。
立花社長 正直にいえば、地元の方々に売って試合をすれば我々は経営的にプラスになるんです。ただ、その一方でやれることは限られていて。年に1回の試合の時に、ただ試合だけして帰ってくるんじゃダメだと思うんですよ。入場門からドキドキ感があって、客席につくまでの経路にワクワクしたものがあったら楽しくなるじゃないですか。どこの球場に行ってもあるものしかなかったら楽しくないし、思い出に残らない。だから毎回時間をかけてミーティングをして、職員をほぼ全員投入して、お祭りをやるんです。
東北の一助となりたい。14年12月には、福島県相馬市に屋内運動施設の「相馬こどもドーム」を寄贈。今年12月には、岩手県大槌町で人工芝広場の「大槌こどもグリーンフィールド」(仮称)建設に着工する。2つの施設は子供の遊び場所確保を目的に、寄付金を募り建設にこぎ着けたもの。東北唯一のプロ野球チームとして、グラウンドの内外で地域に貢献していく。
立花社長 やれることをやりたいです。被災地だけじゃなく東北は人口が減っているし、スポーツの力で何とか盛り上げたいという気持ちがありますよね。こどもドームなどのハード面も、選手の被災地訪問などのソフト面もある。地域の方々が必要なものと、我々ができることが合致したときには何かをやっていきたい。ただ、我々が最終的にできることは勝つことなんだと思います。勝って試合を満員にすれば、飲食店などの地域経済にも貢献できる。だから東北全県での試合を、年に2回やっても常に満員にできたら最高です。
東北約900万人のファン獲得を目指し、地域とともに歩んでいく。【取材・構成=松本岳志】



