中日に孝行息子が現れた。今季初先発の小熊凌祐投手(25)がDeNA相手に1安打完封の快投を演じた。与四球も1つで三塁を踏ませず、初回の高橋の2ランで奪ったリードを危なげなく守り、チームの完投一番乗り。開幕ローテーションに入らなかった8年目右腕が大仕事をやってのけて、チームは2試合連続の完封勝ちで3連勝。貯金を1とした。

 小熊が全くつかまらなかった。マウンドでは全く表情の崩れなかったポーカーフェースも、試合終了にはほおが緩んだ。「0」がずらっと9個並んだスコアボードに「まだ信じられない気持ちです。実感が湧いてこない」と半信半疑。プロ最長の9回を1人で投げきり、表情は充実感に満ちた。

 許した安打は4回のロペスの二塁打1本のみ。「大体、3球以内で勝負できた。コース、コースに投げられた」と93球でDeNA打線を料理し、今季2勝目を挙げた。中継ぎで登板した2日ヤクルト戦(神宮)から中3日。先発での初白星は15年8月26日のDeNA戦以来。その時も中3日で投げており、スクランブル登板に動じなかった。

 先輩投手にも支えられた。1回が終わるたびにベンチに帰ると、ネイラーが小熊の肩をもみ「ガンバレ。ガンバレ」とエール。時には投球のアドバイスも加えた。昨年から先発に本格的に転向した小熊は、エース吉見の投球も参考にした。「冷静に考えて投げられた。ここがストライクを取るところ、ボールでいいところと考えられるようになった」。映像で見て分析し、投球の幅を増やした。谷繁監督も「この顔見ていただければ分かると思います。期待以上かな。ほんと、ナイス投球。昨日、若松で今日は小熊と若い投手が結果を出した。本人も自信にしてほしい」と目を細めた。

 孝行息子が支える。14年7月に横行結腸がんで父秀明さんが59歳の若さで亡くなった。先発初勝利のウイニングボールは父にささげ、この日の白球も「お父さんに」。チームは開幕から先発ローテが定まらない状況だが、小熊は「今日だけじゃダメ。これからもローテを守れるように、今日みたいな投球をしていきたい」。空いている穴を埋めるつもりだ。【宮崎えり子】

 ◆小熊凌祐(おぐま・りょうすけ)1990年(平2)8月11日、滋賀県大津市生まれ。近江で2度甲子園出場。08年ドラフト6位で中日入り。プロ入り前に右肘の手術を受け、リハビリからスタート。3年目の11年に1軍デビューし、中継ぎとして台頭。13年には28試合で防御率2・30と活躍した。昨年初めて先発を経験、3度目の挑戦だった8月のDeNA戦で先発として初白星を挙げた。180センチ、80キロ。右投げ右打ち。推定年俸1200万円。独身。