西武木村文紀外野手(28)が今季初の本塁打、猛打賞で3打点、チームを5割復帰、3位浮上に導いた。「やっと出ました」と第2打席で左中間へ本塁打。さらに二塁打を2本放った。

 先発を担う重圧にさいなまれていた。春先の練習試合、オープン戦で4本塁打。開幕スタメンの座を勝ち取った。しかし公式戦に入ると、打撃が低迷。4月後半には打率が1割2分台にまで落ちた。それにつれ、がっしりしていた体格も、見る見る細くなった。90キロ近くあった体重が、80キロそこそこまで落ちた。

 辻監督も、新戦力を登用する難しさに直面していた。当初から「多少結果が出なくても我慢して使う」と腹をくくっていたが、それにしても時間がかかった。「なぜ木村を使い続けるのか」。自宅では、ネット上の手厳しいコメントを目にした夫人が、泣きそうな目を向けてくる。「気にするなと言ってるんだけど…」と肩をすくめた。

 それでも辻監督は、早朝8時の早出特打から木村文に付き合い、アドバイスをし続けた。転機は5月第1週のソフトバンク3連戦。試合前に現役時代の戦友、秋山幸二氏と再会し、木村文の打撃について話し合った。「トップでバットがもう少し寝た方が、スムーズにスイングできるのでは」。そういう結論に至り、その場で秋山氏とともに、木村文に助言を始めた。

 思い切ったフォーム改造は、成果につながった。5月の打率は3割7分1厘。木村文は「使い続けてもらっているのに、申し訳ないとずっと思っていました。これからもっと打ち続けないと」と巻き返しを誓った。【塩畑大輔】