<巨人9-2ヤクルト>◇12日◇ユーピーアール
巨人のエースは俺だ。初の開幕投手を務めた東野峻投手(24)が、7回途中2失点の好投で1勝目を挙げた。6回までヤクルト打線を無安打に抑え、主導権をがっちり握る。7回に突如崩れ、4安打を浴びて降板したが、救援陣の助けも借りて初の「開幕白星」を手にした。打線では6番長野が1号3ランを含む3安打5打点と大爆発。投打がかみ合い、原巨人が快勝で発進した。
東野が表情を変えることはなかった。7回、先頭の浜中に中前打で初被安打。6回終了時に「正直意識しました」ノーヒットノーランだったが、心を支配していたのは勝利への思いだけだった。「意識するとダメですね」。試合後は苦笑いで振り返ったが、チームを勢いづける快投だった。
“3度”告げられた開幕のマウンドだった。東日本大震災の影響で、開幕戦の日程が2度延期。それでも、首脳陣の信頼は変わらなかった。「開幕戦だからといって、緊張はなかったです。睡眠?
もちろん爆睡です」。04年ドラフト7巡目で入団。巨人では87年の西本聖(現ロッテ2軍投手コーチ)以来となるドラフト1位以外の開幕投手にも、平常心で上がれる肝っ玉の強さが東野にはあった。
「ぶちかましてこい」。右ふくらはぎを痛めて戦列を離脱した阿部から伝えられたメッセージ通りの投球だった。4回無死の青木、6回2死二塁の田中、7回無死一塁のホワイトセルと、いずれも勝負球に選んだのは直球。最大の武器であるスライダーもキレ、制球ともに安定していたが、最後は直球で押した。「調子は良かったんで。自信を持って投げられた」と振り返った。
どん底からスタートしたプロ人生だった。初めて迎えた宮崎キャンプでの初ブルペン。同期入団の木村らが、ブルペン捕手を相手に投げる中、相手を務めたのは香田投手コーチだった。「すごく悔しかったです。でも、それが現実だった。自分に力がなかっただけのこと。はね返すには自分が頑張るしかないなと」。逆襲を誓ったこの瞬間こそが野球人としての原点になった。
試合後のヒーローインタビュー。最後に伝えたのは、東日本大震災で被災した方への思いだった。出身地の茨城・鉾田市も被災。友人や知人が避難所生活を送る現状に心を痛めた。「野球をやっていいのか」との迷いもあったが「野球をやって勇気を与えてください」との言葉に背中を押された。野球人としての使命を込めた魂の107球だった。【久保賢吾】



