<オールスターゲーム:全セ9-4全パ>◇第1戦◇22日◇ナゴヤドーム

 全セが、球宴史に残る猛打で快勝だ!

 1-3の5回、ヤクルト相川の中前打で猛攻開始。中日荒木、ヤクルトの畠山とバレンティンの本塁打が出た後、巨人長野久義外野手(26)が左翼席に運び、いずれも球宴新記録となる1イニング4本塁打と8連打を完成させた。今季の交流戦で57勝78敗9分けと大きく負け越したパをド派手にたたきのめし、全セが全パに逆転勝ち。通算成績は全セの71勝75敗9分けとなった。第2戦は今日23日、QVCマリンで行われる。

 巨人長野が、球宴初アーチで球宴新記録を完成させた。5回だ。日本ハム武田勝の初球。外角スライダーを思いきり引っ張った。打球はあっという間に左翼席へ吸い込まれた。1イニング4本目の本塁打と、8連続安打のダブル新記録樹立の瞬間だった。それまで引きつっていた顔から白い歯がこぼれた。「まさか打てると思わなかったので、うれしいです」。打った本人が驚いていた。

 試合前からガチガチだった。「緊張してます」という言葉を繰り返した。レギュラーシーズンでは、リラックスした笑顔も見せる2年目の若武者が「すごく緊張してます。普通の試合より緊張してます」と、珍しく硬い表情だった。報道陣から全セの落合監督の話題を振られても「はい。緊張してます」。出てくるのは同じ言葉。ひと味違った緊張感に包まれていた。

 それを物語るように、1回に球宴初プレーで失策を犯した。先頭のソフトバンク川崎の右中間への打球を後逸し、三塁への進塁を許した。「最初の守備でやっちゃったんで(先発の)岩瀬さんにすいませんって…」。ばつが悪そうに話した。ミスを取り返すことは、そう簡単にはできない。それでも、本塁打という最高の結果で挽回した。原監督から、しばしば厳しい言葉を浴びせられる。怒られても、ミスしても、打てなくてもへこたれないのが長野。前半戦のラスト7試合で、巨人の第75代4番を務めるまでに成長した。

 選手間投票で選ばれた初めての球宴だった。「まず出られると思ってなかったし、あそこで打てるとも思わなかった。僕はナゴヤドームでホームラン打ったことなかったので。よかったです」。巨人選手として初出場年の1試合目での本塁打は史上初。誰もできなかったことをやってのけた。

 原監督は「いい自信になると思います」と目を細め、全セの落合監督は「荒木が打ったから俺も打てると思って、みんな打ったんだろう」と笑いを誘った。オールスターにふさわしい4発の花火。初体験のお祭りで派手に暴れた長野は、日本ハム斎藤のように「持ってる」のではないかと聞かれ「いえ、そんなことないですよ」と謙虚に締めくくった。【斎藤庸裕】