<巨人3-2阪神>◇3日◇東京ドーム
プロ14年目の伏兵が球児を沈めた。同点の9回、巨人古城茂幸内野手(35)が、阪神の守護神藤川から右翼席にプロ初のサヨナラ本塁打を放った。7回の同点機で犯した走塁ミスを帳消しにする劇的な1発。首位ヤクルトと10・5ゲーム差の5位と低迷するが、2位阪神の貯金を阻止したヒーローは「僕らは全然あきらめてません」と叫んだ。
地獄から天国へ、伏兵の古城が一気に駆け上がった。2-2の9回。マウンドには阪神の守護神藤川。7回に走塁ミスで同点機をつぶした古城は「見極めながら四球で塁に出れば、後ろにいい打者がいると思っていた」と、先頭打者としてサヨナラ機の演出を考えていた。初球を空振りし「速い」とバットを短く握る。そして、3球目。振り切ったバットから右翼席へ、きれいな弧が描かれた。ミスを帳消しにするプロ14年目での初サヨナラアーチに、吉村打撃コーチは「自作自演だね」と冗談交じりに絶賛。古城は「ホッとしました」とほおを緩めた。
殊勲打のキーワードは「平常心」だ。代打や守備固めの出場が多い35歳は、出場時にこう考えているという。「成功したいっていうのは大前提。でも悪い結果の方が多いわけだし、どんな場面でも『普通に』って」。2軍での調整も多いが、若手と汗を流すことで原点にも戻る。「みんなはい上がろうとしている。調整してみんなが目指している舞台にいくわけだから、恥じないようにってのはあるよね」。そんな熱い思いを秘め、1軍の舞台に立つ。
だからこそ、痛恨ミスにも、過剰に動じることはなかった。1点を追う7回2死一、二塁で長野が三塁内野安打を放った。勝呂三塁コーチは本塁突入を指示したが、二塁走者の古城は迷っているかのように走り、三本間に挟まれた。「中途半端にいってしまった」と悔やみつつ「ミスしてあきらめる性格じゃない。自分で自分に期待した」。原監督は「想像できないような…いただけませんね」と顔をしかめつつも「見事でしたね。久しぶりにチーム全体がスカーッとしました」と価値ある1発を称賛。力まず平常心でいたことが、ドタバタの末の最高の結末を生んだ。
この日、サッカー女子W杯優勝のなでしこジャパンFW丸山が始球式に訪れ、試合前から注目の的だった。だが最後は「ファンの皆さん、大丈夫ですか?
しげちゃんフィーバー、してくれましたか?」とお立ち台で絶叫した古城が、主役をかっさらった。「興奮しすぎちゃって」と照れたヒーローは、低迷する現状にも「僕らは全然あきらめてません」と宣言した。逆転されてから再逆転しての勝利は、今季初。古城の1発は悩める巨人の風向きを良い方向へと、少し変えたかもしれない。【浜本卓也】



