<ロッテ2-1ソフトバンク>◇29日◇QVCマリン

 ロッテ角中勝也外野手(24)が「下克上弾」で連敗を3で止めた。開幕2軍スタートだったが、昇格後の打撃好調が認められ、この日から5番に昇格。4回1死から右翼ポール直撃の約4年ぶりの本塁打を放った。この2点目が結果的に決勝点となり、2位に再浮上。年俸1000万円(金額は推定)でクリーンアップを任される12球団でも屈指の格安男だが、働きぶりは値千金だった。

 お立ち台を期待する「角中コール」が本拠地にこだましているころ、殊勲の男は病院にいた。24日の西武戦で帰塁した際に右手親指を負傷。連日のようにアイシングをし、練習も控えめに振ったが「試合になったら痛みを忘れていた」。この日は試合中に痛みを訴え、途中交代して病院へ。携帯電話で自分の一打が決勝点となったことをチェックし「よかったです」と喜びをかみしめた。検査の結果も幸い、捻挫と軽かった。

 負傷を感じさせない一振りだった。4回1死、岩崎の143キロ直球を上から強くたたいた。08年4月16日の楽天戦以来となる4年ぶり通算2本目の放物線が右翼ポールに直撃。「本塁打としては4年前の方がうれしい」と言うが、初本塁打より上回った部分もある。この日は父稔さん(53)母久美さん(48)が1年に1度の観戦。「両親の前でヒットも打ったことがない」。最高の親孝行となった。

 5番に成り上がった。昨季は150打席以上で打率2割6分6厘。だが今季はオープン戦3打席だけで2軍に降格した。それでも「楽しくやっていた」と試合に出られる喜びを感じて2軍で3割8分8厘の成績を残して、14日に昇格。打率3割を維持しながら7番、1番、6番と打順を上げ、この日、ついに年俸1000万円で5番に入った。今季は12球団でも800万円の広島会沢が5番に入っただけ。「間違いなく安いでしょう。でも打撃スタイルは何番でも変えない」と冷静だ。

 成り上がりぶりは月給13万円の四国独立リーグから入団の野球人生が象徴している。「勝てるように貢献したい」。下克上を目指すチームに似合う実直な5番になれる。【広重竜太郎】

 ◆角中勝也(かくなか・かつや)1987年(昭62)5月25日、石川県生まれ。日本航空第二高からトライアウトを経て06年に四国独立リーグ・高知で1年プレー。同年ロッテ7位指名。昨季までの通算は93試合で打率2割2分2厘、1本塁打、14打点。180センチ、80キロ。右投げ左打ち。