43年ぶりの快挙だ!

 国立の静岡大が、71年以来2度目となる全国切符をつかみ取った。

 24日、岐阜県で東海地区大学野球春季選手権大会が行われ、第1試合で中京学院大(岐阜)を延長10回タイブレークの末に6-2で倒すと、続く第2試合の皇学館大(三重)も0-3で迎えた3回裏に、大沢智史主将(4年)のソロ本塁打に加え、相手のミスを誘う攻撃で一気に5点を奪って逆転。8-4で競り勝って優勝を飾った。

 6月10日開幕の全日本大学野球選手権(東京・神宮球場ほか)では、初戦で東日本国際大(南東北代表)と激突する。

 人目をはばからず、静岡大ナインが男泣きした。4年生らはもちろん、何より就任42年の横山義昭監督(61)が胸にこみ上げる気持ちを抑えられない。「低迷した時期もあったけど、4年がまとまりチームが成長した」と大沢主将。2戦連続の試合で体は疲れて動かない。試合直後は派手なガッツポーズをできなかったが、涙が歓喜のしるしだった。

 2本の本塁打が東海制覇の流れをつくった。最初の中京学院大戦では4回表無死一塁で、教育実習の合間を縫って合流した3番稲葉瞬(4年)が先制2ラン。同点に追いつかれたが、1死満塁から始まる延長タイブレークの10回表、先頭打者となった稲葉が四球による押し出しの追加点。その勢いで4点を挙げた。

 約30分間の休憩後、すぐに迎えた皇学館大との2戦目も0―3で追う3回裏、先頭の大沢主将が左越えソロ本塁打を放つと相手投手が浮足立つ。悪送球なども誘い、0安打ながらもさらに4点を追加。投手陣も教育実習の合間に駆けつけた森田雄大(3年)が5回まで、1戦目を10回完投した加藤大智(3年)が残り4回を投げきって競り勝った。

 71年の全国出場の翌年から静岡大を率いた横山監督は「最初、部員は15人だった」と振り返る。国立大のため私立大のような野球の推薦入学はない。さらに、一切勧誘はせずに希望者だけで強化。大学からの補助金もない。99年には十二指腸にがんが発見され、入院を余儀なくされる苦難もあった。横山監督は「がんの後から生きることが幸せで、凡ミスに怒鳴らなくなった」と苦笑い。この日は直美夫人の59回目の誕生日。また6月1日には長女瑠衣さん(31)が結婚式を控えており、支えてくれた家族に東海制覇をささげた。

 来月10日の全日本大学選手権前には、主力数人が教育実習でチームを抜ける。万全の調整で臨むことができないが、大沢主将は「神宮1勝が目標」と掲げた。初出場の71年は中京大に0-7で負けた静岡大が、43年ぶりの全国での1勝を狙う。【藤中栄二】

 ◆静岡大

 1875年(明8)に前身の静岡師範学校が創立。1949年(昭24)に、旧制の静岡高校、静岡第一師範学校、静岡第二師範学校、静岡青年師範学校、浜松工業専門学校の計5校が統合され、新制の国立大として創設された。静岡、浜松両キャンパスに加え、藤枝市、浜松市天竜区にも農学部の関連施設がある。学部は人文社会科学部、教育学部、情報学部、理学部、工学部、農学部を設置。大学院には人文社会科学、教育学、情報学、理学、工学、農学の各研究科がある。所在地は静岡市駿河区大谷836。伊藤幸宏学長。