元プロレスラーのアントニオ猪木氏(70=本名・猪木寛至)が、日本維新の会から7月の参院選比例代表に出馬することが4日、分かった。今日5日、石原慎太郎共同代表と会見を開き、正式発表する。89年から95年まで参院議員を1期務めた猪木氏にとっては、18年ぶりの国政挑戦となる。

 猪木氏は、89年参院選でスポーツ平和党(当時)から比例代表に出馬し、99万3989票を集めて初当選した。90年の湾岸戦争時には、外務省の反対を押し切ってイラクに渡り、日本人人質の解放に尽力した経緯もある。党内では「実績もあり、単なる著名人候補ではない」(関係者)と評価を受けた。別の関係者によると、猪木氏の擁立作業は党上層部の間で進められ、この日、初めて知らされた所属議員もいたという。

 維新には、共同代表の橋下徹大阪市長(43)による従軍慰安婦発言で参院選を前に大逆風が吹いている。しかし、参院選の候補者について、石原氏がかねて「華のある候補者がいない」「三浦雄一郎が出てくれないかな」と嘆くなど、著名人候補の擁立は難航していた。この日、公示まで1カ月となり、老若男女に浸透した猪木氏の知名度で比例票を掘り起こし、何とか巻き返しを図りたい思惑があるようだ。

 ただ、猪木氏が北朝鮮と良好な関係を築き、訪朝を繰り返していることに関し、北朝鮮が拉致問題の解決に動かないことに批判的な声が強い同党内から、異論が出る可能性も指摘されている。一方で、猪木氏の北朝鮮とのパイプを、拉致問題解決に生かせないか模索する向きもあるとされる。崖っぷちの維新にとって、猪木氏擁立は吉と出るか、凶と出るか。