<リアルジャパン>◇16日◇東京・代々木第2体育館

 大相撲の元大嶽親方で野球賭博問題で日本相撲協会から解雇された元関脇の貴闘力(46)が、プロレスデビューした。鈴木みのると組んで大仁田厚、矢口壹琅組と対戦。有刺鉄線ボードデスマッチで、流血しながら左の張り手で11分10秒、矢口を粉砕。新たな門出を白星で飾った。

 大仁田の毒霧攻撃で真っ赤に顔を染め、何度も有刺鉄線ボードに背中からたたきつけられた。パイプイス、有刺鉄線バットと何でもありの攻撃にも、貴闘力の闘志は最後までなえることはなかった。

 矢口のラリアット連発を耐えると、ハイキック、張り手で応酬。最後は、大相撲時代に大きな相手を一撃で葬った左張り手で矢口を1回転させ勝負を決めた。「ちょっと抜けたかと思ったけどね。手応えはあったけど、うまく決まってた?」。記者に質問しながら、左手の感触を確かめた。口の中からも流血するなど、全身傷だらけでつかんだプロレス初勝利だった。

 大相撲時代から、制限時間前に相手に突っかける気迫で有名だった。金星9個中、先にプロレス転向した横綱曙から7個獲得。相手が強いほど燃える男は、46歳で転向したプロレスでも、動じなかった。若翔洋、維新力、そして格闘家デビュー目指し修行中の長男・幸男がセコンドを買って出て、場外乱闘でも援護射撃に回ってくれた。

 「自分は一生懸命やった。ファンはどう思うか」と言った貴闘力は、今後について聞かれ「気持ちいいよ」とひと言。新たな戦いへの宣言にも聞こえた。【桝田朗】

 ◆貴闘力(たかとうりき)本名鎌苅忠茂。1967年(昭42)9月28日、兵庫県神戸市生まれ。83年春場所初土俵。最高位関脇。00年春場所、史上初の幕尻優勝。02年秋場所限りで引退。大嶽部屋を興した。10年7月、元横綱大鵬の故納谷幸喜氏の三女と離婚。181センチ、110キロ。

 ◆貴闘力デビューまでのいきさつ

 昨年9月のリアルジャパン後楽園大会で、観戦中の貴闘力を大仁田が襲撃し病院送りに。同11月に貴闘力がプロレス転向を発表し大仁田に対戦要求。その後、大仁田が貴闘力が経営する焼き肉店で無銭飲食するなど挑発を繰り返し、対戦が決定。試合当日に、大仁田の要求を受け有刺鉄線ボードデスマッチにルール変更された。

 ◆大相撲出身者のプロレスラー転向

 日本プロレスの父とも呼ばれる力道山を始め、豊登、天龍、田上ら多くの人気レスラーが大相撲から転向した。親方経験者としては元横綱東富士(錦戸)元横綱輪島(花籠)元横綱曙(曙)についで4人目で、貴闘力を含めいずれも幕内優勝経験者。東富士は年寄名跡襲名問題がこじれ、輪島は年寄名跡担保問題で廃業。貴闘力は野球賭博により解雇と4人中3人が何らかの問題を起こし、角界を去っている。大相撲時代の最高位が関脇は、過去に力道山、若翔洋がいる。