3年ぶりに優勝力士が4人を数えた2015年の大相撲。白鵬の史上最多優勝更新に始まり、照ノ富士の初優勝、大関昇進と話題が豊富だった。その陰に、好記録や珍記録も生まれた。今年1年間、幕内を務めた力士が対象の連載「第4回日刊スポーツ大相撲大賞」では意外な記録を表彰する。第1回は「アップアップ賞」の嘉風(33=尾車)。

九州場所で三役復帰を果たし、番付表に載る自身の名前を指さす小結嘉風
九州場所で三役復帰を果たし、番付表に載る自身の名前を指さす小結嘉風

 あっぷあっぷといえば苦しむさまを指す言葉。だが、相撲では縁起がいい。年間で最も番付を上げた「アップアップ賞」は嘉風だった。夏場所の前頭14枚目から、九州場所の小結へ。なんと「14枚」も上がった。

 「すごいなと思います。気持ち1つで、ここまで変われるんだと思いました」

 夏場所から3場所連続で2桁勝利。九州場所でも初めて小結で勝ち越した。気持ちがどう変わったのか。

 「1つは全力を出し切ることだけ考えた。すると、負けることが怖くなくなった。気持ちの切り替えが、さらに良くなりました」。

 もう1つが、1日に行われた地元大分県佐伯市での巡業だった。6月の正式契約で21年ぶりの開催が決まると、自身の活躍が不可欠だと、自らを追い込んだ。

 「夏場所後に地元で、名古屋で12勝し、秋を幕内上位で戦い、九州は新関脇で迎えて、勝ち越して帰ってきますと宣言したんです」

 名古屋と秋は言葉通り。九州が小結だったのは、番付運に恵まれなかっただけ。まさに有言実行だった。

 「でも、来年の目標というのは特にないですよ」

 目指すのは全力を出し切ることだけ-。来年のアップアップはないかもしれない。なぜなら、上位に居続けるから。【今村健人】

◆15年大相撲「番付高低差」3傑◆


力士名-----
1嘉風14枚西11-東9-東14-東8-西1-小結
2佐田の富士13枚東15-東14-西7-東9-西2-西9
3大砂嵐12枚東13-東11-西3-西8-東2-西1
徳勝龍東16-西7-西4-西5-西6-東8
高安小結-東3-西8-東2-西3-西12