日本相撲協会は29日、東京・両国国技館で次の役員候補を決める選挙を行い、11人が立候補した理事候補は現職の八角理事長(元横綱北勝海)や貴乃花親方(元横綱)らが当選。高島親方(元関脇高望山)が落選して定数10人が出そろった。新理事は春場所後の評議員会を経て決定するが、焦点は理事長選の行方。現状では八角理事長の続投が優勢とみられるが、貴乃花親方を推す声も根強い。

 2時間近い選挙の末、新たな顔ぶれが出そろった。足早に出てきた八角理事長は「評議員会を経て決まることだから、今は何とも言えない」と話すにとどまった。真の決戦は3月28日の新理事会で実施する理事長の互選。ここから、現理事長と、改革を志す親方を中心に推す声が多い貴乃花親方との争いが本格化する。

 関係者によると、長期政権を目指す八角理事長と、貴乃花親方の溝は相当に深い。混戦が予想された今回は両者の思惑が絡み合い、激しい“綱引き”が行われた。「票」は、これまで以上に一門の垣根を越えた。

 理事長選は、両者を除く8人の新理事がどちらの候補を支持するかで決まる。今後は、立候補した4人全員が当選した最大派閥の出羽海一門が鍵を握る。ただ、本来は3人でまとまる予定が、貴乃花親方に近い山響親方も立候補したことで、一門内のある親方が「複雑だ」と漏らすなど、その方針は流動的。決して一枚岩にはなっていない。

 現状では八角理事長の続投が優勢とみられるが、2カ月間で情勢が動く可能性は大いにある。“政権交代”が起こるのか。再選した鏡山親方は「どうなるのか想像がつかない」と漏らした。北の湖前理事長(元横綱)亡き今、角界が混迷の時を迎えようとしている。

 ◆日本相撲協会理事 2年前の公益法人移行後は10人以上15人以内で、このうち年寄=親方は10人以内で外部有識者は現在3人。互選で理事長1人を選出。他の理事は兼務を含め、東京場所管轄の事業、大阪、名古屋、九州の各地方場所、審判、巡業、広報、警備、監察、生活指導、指導普及、教習所、総合企画、危機管理の各部署の部長を務める。任期2年。月給149万8000円。

 ◆北勝海対貴乃花 貴乃花のしこ名が貴花田だった91年に2度対戦し、1勝1敗。名古屋場所は小結貴花田が送り出しで勝ち、九州場所は横綱北勝海が平幕の貴花田を押し出した。