<第5回AKB48選抜総選挙>◇8日◇日産スタジアム

 第5回AKB48選抜総選挙の開票イベント開催され、HKT48指原莉乃(20)が初の1位に輝いた。史上最高の15万570票を獲得。2位大島優子(24)に1万4067票差をつけ、8月21日発売の新曲でセンターに立つ。

 指原本人も、仲間のメンバーたちも全員、マンガのように口をあんぐり開けるしかなかった。2位が大島と発表された瞬間。バラエティー担当の“色物アイドル”が国民的グループのセンターに立つことが決まった。前年1位の大島や次世代エースの渡辺麻を、15万570票でぶっちぎったトップ当選。コンサートを楽しんだ後の7万人の観客からも興奮の大歓声ではなく、笑いの交じったどよめきが起こった。

 「えっと…。今、すごくびっくりして涙も出てこないし、口の中もパサパサ。そのくらい全部、水分が持っていかれてます…」。瞳孔が開いた、ぼうぜんとした顔つきのまま、喜びのスピーチを切り出した。投票開始翌日5月22日の速報1位で奇跡の気配は感じていても、いざ実現すると驚かずにはいられなかった。当然だ。1年前の総選挙直後に報じられた過去の恋愛スキャンダルで博多に異動させられた身だったからだ。

 まだCDデビューもしていない若手たちに交じり、博多の劇場で毎週踊った。「取り返しのつかないことをした身ですから、もう私個人のことは優先すべきじゃないんです」。奉仕活動のようにグループのために心血を注いだ。「HKT48の知名度を上げることだけを考えてやってきました」。後輩たちの相談相手にもなった。HKT48村重杏奈(14)は「ご飯やマッサージに連れて行ってもらった」。宮脇咲良(15)は「いつも的確なアドバイスをくれ、AKBの先輩方の輪の中にも交ぜてくれた」と慕う。献身的な姿勢で、1度離れかけたファンの支持を引き戻した側面があった。

 一方で、AKBに単なる世代交代にとどまらない、笑いの伴う変化を望んだファンが、票を集中させた結果でもあった。「テレビ番組では明るく頑張ってましたが、私にとって一番孤独な時間でした。でも15万票という票を見て、私は孤独じゃないんだと感じることが出来ました!!」。ステージでは泣かせる演説をしてみせたのだが、反応はどうもいまひとつ…。続いて「昨日、もしかしたらと思って一応、小顔のマッサージに行っていたので良かった」と自虐ネタでようやく笑いが返ってきた。新センター指原にファンが望むものが、はっきりと分かる反応だった。

 過去の「前田・大島ライバル物語」のような感動シーンはゼロ。ゴンドラに乗ったウイニングランでもBGMすらなし。スタジアムをダラダラと1周させられる演出が、最後の最後まで見事なまでに指原にピッタリはまっていた。【瀬津真也】

 ◆指原莉乃(さしはら・りの)1992年(平4)11月21日、大分県生まれ。愛称「さしこ」「さっしー」。07年10月にAKB48の5期生オーディションに合格し、08年3月にデビュー。昨年5月「それでも好きだよ」でソロデビューも、過去の熱愛を報じられ同6月にHKT48移籍。今年4月HKT48劇場支配人兼任に。