宙組トップ娘役の実咲凜音(みさき・りおん)は、「エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-」で、悲願のタイトルロールを得て「神様がくださったプレゼントではないか」と言い、全身全霊を傾ける。トップ娘役として「ベルサイユのばら」「風と共に去りぬ」にも出演し、劇団8人目のエリザベートを射止め、宝塚代表3作を“制覇”した。東京宝塚劇場は9月9日から。

 強い思いを抱き続ければ、いつか夢はかなう-。

 「あこがれていた役。研5(入団5年目)の試験で(エリザベートの)『私だけに』を歌い、もう歌うことはないと思っていた」

 宝塚では珍しい娘役のタイトルロール作だ。

 「娘役としては、ここまで強くあっていいのかと、違和感もある。でも、エリザベートの自分を貫く強さは、自分も持っていたい。また、体重が減っちゃうんじゃないか(笑い)」

 これまで「ベルサイユのばら」でマリー・アントワネット役、「風と共に去りぬ」ではメラニー役で主要キャスト。劇団を代表する3作すべてに出演した。

 「ちっちゃな夢を持って、1つずつ進んできて、本当によかった」。大それた夢ではなく、現実的な目標を1段ずつクリアしてきた。「下級生の時は、娘役さんだけのあの場面に入りたいとか」。積み重ねが、大役へ続く道だった。

 「無意識のうちに『いつかエリザベートができたらな』って思っていた面もあったからかもしれません」

 今回、劇団9回目の公演。実咲は劇団8人目のエリザベート。過去2回エリザベートを演じた花總(はなふさ)まりら先輩の演技も研究した。

 「細かな動きも(映像で)確認しました。素晴らしいナンバーばかりですし、エリザベートの決心。強い気持ちを出さないと」

 トップ娘役就任から丸4年を迎え、新たに感じる殻を破ろうとしている。

 「最近は、自分で枠を固めているかもしれない。お芝居も、歌も、枠をはみ出すところを見せたい。(エリザベート役は)神様がくださったプレゼントじゃないかと思う。課題を乗り越えて、大きくなりなさいと言われているような」

 ウィーンへも行き、エリザベートの息吹を感じた。

 「ゆかりの教会、博物館と全部(エリザベートの気持ちを)感じ取ってめぐり、最後にはぐったり。壮絶な人生を実体験しました」

 皇帝にみそめられ、16歳で皇后となったが、伝統と格式に縛られる宮廷生活に苦しみ、息子を失ったエリザベート。彼女の人生に寄り添いつつ、役を演じきり、実咲はまた1段、階段を上がる。【村上久美子】

 ◆エリザベート-愛と死の輪舞(ロンド)-(潤色・演出=小池修一郎氏、演出=小柳奈穂子氏) ウィーン発ミュージカル「エリザベート」をもとに、黄泉(よみ)の帝王トートを主役とし、宝塚版として96年に一路真輝主演で日本初演。宝塚9回目の上演で、トップ朝夏まなとが9代目トート、エリザベートは実咲凜音で8人目。今公演のフランツは真風涼帆、ルドルフは澄輝さやと、蒼羽りく、桜木みなとの役がわり。

 ☆実咲凜音(みさき・りおん)7月5日、神戸市生まれ。09年入団。花組配属。12年に宙組へ移り、同年7月に前宙組トップ凰稀かなめに相手役として迎えられ、トップ娘役。13年「風と共に去りぬ」、14年「ベルサイユのばら」に出演し、エトワールを務める。昨年2月から朝夏の相手娘役。今年11~12月には専科の轟悠主演作「双頭の鷲」出演予定。身長163センチ。愛称「みりおん」。