両側声帯ポリープで療養していた歌手May’n(25)が26日、東京・日本武道館でデビュー10周年記念公演「POWERS OF VOICE」を開いた。5月15日に都内で行われた10周年記念アコースティックツアー後、同18日に休養を発表。デビュー10周年記念全国ツアーを7公演、残していたが全て中止し、6月上旬にポリープの除去手術に踏み切り、この日が3カ月ぶりのライブだった。

 May’nは「オープニングから泣かない」と目標を立て、1曲目は元気なナンバー「Ready Go!」を選んだ。それが、この日、集まった8000人のファンからニックネームの「部長」と呼ばれると、涙腺がゆるんだ。歌い終わる頃には涙が流れ、手でぬぐった。「ブドーカーン!! 毎日、会いたくて、歌いたくて、しょうがなくて…本当に今日が来ることができました」。

 数年前に、のどに違和感を覚え検査したところ、ポリープが見つかった。影響が少ないとの診断で、医師と相談しながら活動を続けてきたが、今年4月下旬にあらためて病院に行ったところ、両側声帯ポリープと診断され「悪化したら歌が歌えなくなってしまうという恐怖から」と、自らの判断で休養を決断。手術は成功し、医師から完全復活へ太鼓判も押されたが、術後、3週間はしゃべることができず、その間、声が元のように出るか…そんな不安とも戦った。7月26日に東京、大阪、名古屋の大型ビジョンを使い、活動再開を生報告。復帰後初の単独公演となる武道館公演に向け「何より歌いたくて、しようがなくて、この日を無事に迎えられることをうれしく思う。デビュー10周年の集大成となるステージをお届けしたい」と宣言し、涙した。

 この日、初のベストアルバム「POWER OF VOICE」をリリースしたタイミングもあり、05年6月1日のデビューから翌07年末まで、本名の中林芽依としてリリースしたデビュー曲「Crazy Crazy Crazy」など3曲を歌った。08年1月1日にMay’nに変えた後、中林芽依時代の歌を歌ったのは初めてだった。「本名の時の歌をMay’nになって初めて歌うことができた。本当に10年続けてこられたと思った…幸せ」と涙ぐんだ。

 この日は、7月22日発売の新曲「ヤマイダレdarlin’」を観客の前で初披露したのを含め、全23曲を歌った。最後に選んだのは、May’n名義となった08年4月に出会った、テレビアニメ「マクロスF」に登場する歌姫シェリル・ノームの歌「ダイアモンド クレバス」だった。May’nは歌う時、涙で顔をくしゃくしゃにして思いのたけを語った。

 「本当に幸せです。みんなに出会わなかったら絶対に作ることができなかった歌たちです。デビューする時に、私はここから1人で頑張っていくんだって、そう決めました。自分の意思で決めた道だからこそ、どんなにつらいことがあっても絶対1人で頑張るんだって、誰にも悩みを話さずに前を見続けてきました。10年たって、たくさんのライブで大好きな仲間たちに支えられて、気付くことができました。1人だったら、10年続けることなんてできませんでした。歌をやめたいと思ったことはありません。音楽を嫌いになったことは、1度もありません…だけど、ずっと歌を歌えるのかなぁって、悩む日がたくさんありました。普段は、ステージ上みたいに自信なんて持てない私です。そんな私が、ここで、こんなにも思い切り歌を歌えるのは、たくさんの自信をくれる仲間たちのおかげです。みんなのおかげでMay’nとして立たせていただいています。本当に皆さん、10年支えてくれてありがとうございました」

 ライブの最後に、May’nは「みんなのせいで泣き虫になってしまいました。本当に幸せな集大成の10周年を、皆さんと過ごせて本当に幸せです。ずっと皆さんと記念日を重ねていきたいと思います。まずは20周年に向けて…皆さん、よろしくお願いします!!」と宣言。武道館の全方向のファンに手を振り、笑顔と涙が混じった、泣き笑い顔でステージを後にした。