オダギリジョー(39)が映画「オーバー・フェンス」(山下敦弘監督、来年秋公開)に主演することが9日、分かった。85年の芥川賞候補作の同名小説の映画化で、函館を舞台にしたラブストーリー。主人公と関係を深めていくホステスを蒼井優(30)、2人の関係を見つめる元会社員を松田翔太(30)が演じる。

 映画「オーバー・フェンス」は作家佐藤泰志氏の同名小説の映画化でテーマは「共に生きる」。「愛をなくした男」「愛を求め続ける女」の恋愛模様を描く。オダギリは、妻を追い詰めてしまったことへの自責の念で離婚後は会社を辞め、故郷で心を空っぽにして過ごす主人公を演じる。人と距離を置き、感情を深く押し込めて生きている男だ。星野秀樹プロデューサーは「セリフがなくても心情が表現できる俳優」としてオダギリに出演を依頼した。

 蒼井は、情緒不安定なホステス役。原作にない「鳥になりたいと願う女」という設定が加えられている。自由になりたいという願いが込められており、鳥の求愛ダンスを披露する場面もある。二面性を演じる演技力と、ダンスを美しく踊ることができるバレエ経験などから白羽の矢が立った。2人の共演は07年映画「蟲師」以来。今回はラブシーンもあるという。

 松田演じる元会社員は、職業訓練校で主人公と出会う。一見軽いが、2人の関係の変化に気付く繊細さも持ち合わせる。星野プロデューサーは「函館なまりをどんな人が演じたら意外だろうかという点や演技力、存在感もある」として出演を依頼したという。オダギリ、蒼井とは初共演となる。

 撮影は6月下旬から約1カ月間、函館市で行った。スタッフ、出演者が市内の小さなホテルに泊まる合宿状態で、自然にチームワークが出来上がった。現場を盛り上げる蒼井と松田を、オダギリが見守る形で結束したという。

 オダギリは「みんなで過ごす時間は劇中の関係性を見事に反映したり、より深めたり、貴重な時間でした」と充実した撮影を振り返る。蒼井は「長い間、この作品に出合うことを待ち続けていたような気が今しています」、松田は「吸い込まれるように呼ばれた気がしました。とても自然に集まったチームでした」とそれぞれ話している。

 ◆映画「オーバー・フェンス」 妻に見限られた白岩は故郷函館に戻り、職業訓練校に通いながら失業保険で暮らし、仲間の代島に連れられて行ったキャバクラで風変わりなホステス聡と出会う。2人は距離を縮めていく。佐藤氏の小説の映画化としては10年「海炭市叙景」(熊切和嘉監督)、14年「そこのみにて光輝く」(呉美保監督)に続く「函館3部作」の最終章。