「東京物語」「青い山脈」などで知られる昭和を代表する女優、原節子(はら・せつこ)さん(本名・会田昌江=あいだ・まさえ)が9月5日、肺炎のため神奈川県内の病院で亡くなっていたことが25日、分かった。95歳だった。葬儀は近親者による密葬で行った。

 60年の映画「娘・妻・母」で恋人役で共演した仲代達矢(82)は訃報に「突然のこと、びっくりしました」と話した。「『東京物語』を見て大ファンでした。当時の映画界で神聖極まりない存在で、初めてお会いして、何て笑顔がきれいな女優さんと思いました。恋人役をやらせていただいて興奮状態でした」。

 キスシーンもあった。「当時はキスシーンといっても唇は合わせなかった。でも成瀬巳喜男監督に『仲代君、本当にしてね』と言われるし、原さんのマネジャーは『うちの原は1度も唇を合わせたことがないので』と言う。困って原さんに相談したら『いいわよ』とおっしゃって、ドキドキしながら実際にしたのを覚えてます」。

 ロケでは意外な素顔も見た。「神秘的な女優というイメージでしたが、みんなでお酒を飲んだり、気楽な方でびっくりした。『バクチしない?』と言って、ドボンとかカード遊びをして相当負けたこともあった。普段はざっくばらんな方でした」と振り返った。