俳優内藤剛志(61)主演のテレビ朝日系連続ドラマ「警視庁・捜査一課長 シーズン2 ヒラから成り上がった最強の刑事!」(木曜午後8時)が、13日にスタートする。

 12年から2時間ドラマ、昨年4月に連ドラ、そしてシリーズ2作目。ドラマと同じく、脇役から主役へとステップアップしてきた内藤に聞いてみた。

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 内藤は小学3年から3年間、子役を経験した。一度、役者の仕事を離れて、日大芸術学部映画学科に入学して、再び芝居の世界に入ってきた。

 「父親がNHKの技術なんですけど、その影響があったんで、多分ディレクター、と思ってたんだけども。大学で映画監督の長崎(俊一)と出会って『ちょっと、やって』って言われて出たり。あるいは他の大学の、早稲田のシネ研の室井(滋)とかがいたところに行って、『ちょっとコレやってくれるか』『はい』とかって。で、黒沢くん(黒沢清監督)とかが、立教にいたんですけどね。『ちょっとこれ出て』って言われて『ちょっ、ちょっ、ちょっ』と出ているうちに、大森一樹監督が映画『ヒポクラテスたち』で声をかけてくれた。『ああ役者でいいのか』って思って『じゃ、あまあいいや』って。あんまり、何をしなきゃいけないって思ってたわけじゃないんですよ、実は」

 「ヒポクラテスたち」でデビューしたのが85年。25歳だった。

 「まあ、メジャーデビューという意味ですけども。その前も、この辺(東映大泉撮影所)にいましたけどね。一言のセリフで。それこそ、(その他大勢の)ガヤでしたけども」 映像の世界に入ってから40年がたった。61歳はサラリーマンなら定年を迎えている。

 「あっという間ですね。どうなんですかね。ないですけどねえ、定年。自分で決めなきゃ、ですもんね。でも、ある方がいいとも言えますよ。だってそこから『第2の人生』を考えられるでしょ。僕らはもう、考えられないじゃないですか。もう、これしかないから。何かこう、ずるずると、行ってしまう怖さもありますよねえ」

 役者しかやったことがない。

 「バイトはありますけど、勤めた事もない。だから定年って考えた事ないし、よくこういうドラマで、辞表とか進退伺とかあるんですけど、意味わかんないですからね。辞任と辞職が何だろうかも分からないし、社会人としては全く。ドラマの中で覚えた社会しかないので、ちょっとこう、変かもしれませんね」

 40代は連ドラに出続けて、鉄人といわれた。60歳になって、老いを感じることもある。

 「僕らは身体を使って動くので、立ち回りでも、走るのでもどんどんどんどん、息があがる。ああ、これ老いだなって思いますよ。感じます、すごく。それは、僕の中での物差しで感じますよね。昔だったら、この階段を走って上がれたのに、今できなくなったとか。あるいは、せりふを早く言えないから、ちょっとスピード落とそうとか。老いだと思いますね。それはそれで、人間を演じるのであるから、いいんじゃないかと。今、61歳だけど、テレビでは61歳には見えないですよね、見えないっていうか、皆さんのイメージとしてですよ。だから50台の役をやってますけど、でも、10年たって、多分、60代の感じになってくる。だから年を取って行く事、それが俳優として価値があるのであれば、それはうれしい事ですからね。だから、老年を演じる…だって、一生同じ役ではいけないわけですから、もしかしたらその、捜査一課長をやめる日が来るっていうのは、面白いですよね。で、誰かが、じゃあ、他の人が、例えば田中圭が捜査一課長になり、僕がそこを定年退職して、何か違うところにいて相談役になるとか。もう、おじいちゃんになってるとかっていうのが、楽しみ。老化という言葉はネガティブですが、老化していくことは僕にとっては嫌な事ではない。ある先輩がこんな事をおっしゃってて『駄目になっていくのが楽しい』と。今まではあれできた、これできた、と。『できなくなった事を楽しむんだ!』っておっしゃってた先輩がいて。ああ、そりゃあ、そうだなと。身体を使う仕事ですから、特にそうですよね。これで、100メートルダッシュして、10秒で走ってくれっていわれても、無理なわけですから。そこが面白いわけでしょう、っていう風に考えてますんで、見える部分は違うかもしれませんけど、僕の中での老化は、普通に感じてますね」

【小谷野俊哉】