モデル押切もえ(33)が小説家デビューすることが7日、分かった。完全書き下ろしのオリジナル小説「浅き夢見し」(小学館、8月7日発売)で、売れないモデルが困難に立ち向かいながら夢をかなえていくストーリーだ。

 押切は小説執筆の動機を「夢を追うって大切だけどすごく大変。モデルの仕事では表現しきれなくて、小説で表現しました」と説明した。約3年前から書き始め、執筆量はパソコンのワードで約400ページ、2万字で12章になったという。「現場の空き時間とか旅先とか。最後は休日出勤したり、徹夜作業もありましたし、モデルの仕事と全く違う生活を送ってました」。

 ストーリーは完全フィクションだが、随所にこの業界で生きる押切の思いが投影されている。「最初のオーディションのシーンは、(自分が)落ちた時の悔しい思いだったり…。そこからは空想、フィクションなんですけど」。

 押切自身、人気モデルの地位を築くまでには苦労もしている。10代でギャルファッション誌のモデルとして活躍するも、01年にCanCamモデル転身後、しばらくはなじめずに「アウェーだった」という。「堂々としていなきゃいけない仕事なんですけど、その裏側には自信がもてなかったりとか。メークされる側の葛藤とか。そういうのは書けたかなと」。

 元来、活字が好きで読書を欠かさないという。太宰治、角田光代、江國香織、村上春樹…。「最近は百田尚樹さんの本で泣きました。阿川佐和子さんの小説、エッセーもすごく好きです」。小説執筆は初めてだが、09年に発表したエッセー本「モデル失格」は、累計16万部を突破の実績もある。「よく吐き出したなと思うような心の叫び、心情は、作品じゃなきゃ出せなかったと思う。これからも挑戦していきたいです」。現役モデルで小説家デビューした例は見当たらない。押切が“書けるモデル”のパイオニアになる。