ランベリに託す牧場47年目の夢/有馬記念
<有馬記念>
有馬記念に初出走するミヤビランベリ(牡6、栗東・加藤敬)は、生産者の原武久牧場(北海道・新ひだか)にとっても、63年の牧場創設以来、初のG1出走となる。故障のため3戦3勝でターフを去ったサクラロータリー以来となる、同牧場にとっての希望の星がランベリだ。後継者がなく年内にも廃業を考えていた小さな牧場は「最初で最後の夢」が現実となり、胸を躍らせている。
「まだ夢を見ているようだ。いまだに信じられないんだよ」。原武久場主(69)は、ランベリの有馬出走を顔をしわくちゃにして喜んだ。現在は妻ナツ子さん(66)と2人で、繁殖牝馬6頭と、今春に生まれた当歳馬2頭を世話している。63年の牧場創設から47年目にして初のG1。そして「テレビで見る夢の夢のまた夢」という大舞台に、ついに愛馬を送り出す。
2人は顔を見合わせ「これが最初で最後になるんじゃないかな」としみじみと言った。後継者もなく、廃業を考えはじめていた昨夏、ランベリがG3七夕賞で牧場に初の重賞勝ちをもたらした。すると今年に入って目黒記念など重賞3勝を挙げた。2連覇した七夕賞では競馬場に駆けつけ「生まれて初めて」口取り撮影に収まった。「もう少し頑張ってみようかな。コツコツとやっていればいいこともあるもんだね」と笑う。
武久さんは32歳の時、牧場を引き継いだ。水田と畑作を兼業し、アラブの繁殖牝馬2頭で牧場を創設した先代の父鉄太郎さん(享年59)を、同乗していた車の交通事故で亡くしてのことだった。「牧場のことは何も知らなかった。まずは馬を見ることから」と、牧場経営のかたわら、家畜商の知人を頼り、15年間、馬を見る目を養ってきた。
86年には無傷の3連勝でターフを去ったサクラロータリーを生産した。2戦目で翌年のダービー馬メリーナイスを2着に退けたように、G1級の実力を持っていた。牧場最初の期待馬は大成できなかったが、これを機に牧場の評価が上がり、生産馬が高値で売れ、経営は軌道に乗った。
思い入れ深いロータリーに、ランベリの姿は重なる。ロータリーの母テンスパークに似た体形の馬を探し求め、導入したのがランベリの母アステオンだった。「とにかくテンスパークにそっくりだった」。ホースマンとしての信念が、初のG1出走馬を生んだ。
武久さんは脳梗塞(こうそく)でこれまで2度倒れ、ナツ子さんも暴れた馬に引きずられ、足に大けがを負っている。ともに後遺症の残る体で助け合い、リスクが少なく、安定した収入が得られる子分けの経営形態に転換し、牧場を営んできた。デビュー2戦目の勝利後に骨折し、脚にボルトを埋め込みながら約1年半後に復活したランベリ同様、苦難を乗り越え、ここまでやってきた。
レース当日、武久さんは中山競馬場に向かう予定だ。志半ばで他界した父の形見を胸に、ランベリに声援を送る。【奥村晶治】
[2009年12月22日8時27分 紙面から]
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