札幌市内で5日に「さっぽろ雪まつり」が開幕した。毎年、時代を席巻したアスリートや事象などが大雪像となり登場する。11年には、その年日本ハムに加入した斎藤佑樹、黒船来航150年の03年はペリー、14年にはヤンキース入りした田中将大。今年は、ラグビーW杯で活躍した五郎丸歩や、3月26日開業の北海道新幹線が並ぶ。

 初めてJ1昇格した01年には、札幌を応援する大雪像もつくられた。前年の00年、元日本代表の岡田監督の元、圧倒的強さでJ2を制した。今年で67回を数える、2月の大イベント。その大雪像候補に選ばれるには、それだけインパクトを残す必要がある。

 昨年は昇格を逃し、北海道のシンボル的存在になれなかった札幌。16年は4季連続J2となる。7日まで沖縄1次合宿、10日からは熊本で2次合宿が始まる。クラブ創設20周年。合宿で激しいチーム内競争を繰り返し、北海道初のプロスポーツクラブとしての“復権”を目指す。

 担当8年目。毎年この時期が1番楽しい。開幕し、結果が出てしまうと、シビアに順位を気にしなければならなくなるが、キャンプ時期は、期待感を優先に据え、チームを見ることができる。新加入選手が、どれだけ機能するか、昨季活躍した選手は、今季は、もっとやってくれるのかなど、うがった見方をせず、胸ふくらませることができる。

 中でも注目しているのがMFジュリーニョだ。左サイドを主戦場にする184センチ、78キロと大型のアタッカー。諸事情あり、クラブ発表前に来日し、沖縄合宿中に合流した。加入発表日と重なった4日の湘南との練習試合では、デビュー戦で早くも左クロスから決勝点をアシストした。「前向きでもらったら仕掛けるのが形」。新加入ブラジル人3人のうち、最も遅れて来日した男が、1番にアピールを開始した。

 本名は「ジュリオ・セザル・ゴジーニョ・カトーレ」。既にチームメートに「ジュリ」と呼ばれている。ジュリーといえば世代的に沢田研二だ。ジュリだから一文字違うが、どうにも沢田研二に似ていないことが引っかかり、クラブ関係者と話をしていると、誰か他の人に似ているということになった。

 「いっくん、じゃないかな」。音楽グループ「Every Little Thing(ELT)」のギタリスト伊藤一朗のことだ。確かに面長で、大きい鼻が非常に似ていて、笑うとなお、口元がそっくりだ。そう見ることで、プレーだけでなく人間的にも、次第に親近感が増してきた。

 札幌の外国人選手は過去エメルソン、フッキ、ダビら、ここでブレークし、ステップアップしていく選手が多い。ブラジル4部相当のオペラリオから一旗揚げにJリーグに挑む29歳の“いっくん”。ELTはヒット曲「fragile」で「まだ知らない明日へと、つながってゆくよ」と歌う。日本では未知数のプレーヤーも、きっかけ1つでどんなビッグな未来を手にするか、計り知れない。

 愛嬌(あいきょう)ある風貌とアピール意欲。人気者になれる資質は十分に秘めている。是非Jでブレークし、来年2月、大雪像「北のいっくん」として、雪まつりに君臨してほしい。


 ◆永野高輔(ながの・たかすけ)1973年(昭48)7月24日、茨城県水戸市生まれ。両親が指導者だった影響で小5からフェンシングを始め競技歴15年。早大フェンシング部で一度、現役引退し、00年に再起してサラリーマン3年目の27歳で富山国体出場。09年から札幌担当。