新生ジャパンの初陣は日本サッカー協会の原博実強化担当技術委員長(51)が、「代行監督」として指揮を執る異例の事態となった。24日、渡欧先から帰国した同委員長は、大仁邦弥副会長とともに都内で異例の「日本代表監督選考に関する説明会」を行い、次期日本代表監督が未定の現状を説明。9月4日のパラグアイ戦(日産ス)、同7日のグアテマラ戦(長居)は原代行監督が決まった。同時に最優先候補者の元ポルト監督ビクトル・フェルナンデス氏(48)との交渉消滅が明らかになり、新監督への見通しは立たず、新生日本代表は混迷の中でのスタートが決まった。

 なぜ新監督が決まらないのか。その理由は最後まで分からなかった。約2週間の交渉行脚から戻った原委員長は、疲れた表情で「残念ながら契約できませんでした」と謝罪した。

 原委員長は7月22日に南米チリに入り、ブエノスアイレスなどを巡って欧州へ移動。Rマドリード前監督のペジェグリニ氏、現オリンピアコスのバルベルデ監督と交渉した。7月31日に一時帰国し、日本協会の小倉会長に状況を報告。

 8月5日に再渡欧し、候補者と交渉を続けたが、この日までにビクトル・フェルナンデス氏との交渉消滅が判明。同氏は前所属のスペインリーグ・ベティスと訴訟問題を抱えており、日本協会との交渉は難航。第1候補との交渉がたたれ、元オランダ代表監督のマルコ・ファンバステン氏、元アルゼンチン監督のホセ・ペケルマン氏との交渉が濃厚となった。

 会見で原委員長はペジェグリニ氏とバルベルデ氏とは交渉決裂を公表。しかし、肝心の交渉中の新監督候補についてはしどろもどろ。「何人かの候補を持ちながら準備しています。最終提示を待っている人もいますし、コーチや家族のことなどより細かいことを交渉している人もいます」と述べるにとどまった。

 同時進行で交渉中の川崎F前監督の関塚隆氏(49)の五輪代表監督就任についても、個人名は伏せたが「五輪の監督が代表監督よりも先に決まる可能性はあります」と明言。五輪監督はフル代表のコーチを兼務するが、代表監督よりも先に代表コーチが決まる異常事態を認めた。

 26日までに行う予定の代表発表は27日に延期。本場欧州で実力者監督との交渉に挑んだ今回のチャレンジは、現状では事態を後退させただけ。遅くとも10月の親善試合までには新監督を決めると公言し、9月中旬の合意を目指すもその根拠は乏しい。8月中旬の新監督誕生を描いた挑戦は、出口が見えないまま夏の終わりを迎えている。【井上真】