サッカー日本代表選手の勝利給など待遇改善を巡る日本協会と日本プロサッカー選手会(JPFA)との第1回の団交が21日、東京・文京区のJFAハウスで行われた。両方が弁護士を立て約1時間半話し合い、JPFAから(1)勝利給アップ(2)肖像権認定(3)大会ボーナス支給率アップの3つの条件が提示された。一方この日、日本協会の小倉純二会長(72)は、現状維持を基本にする強硬姿勢を示した。今日22日はJPFA藤田俊哉会長(39)が会見を開く予定で、波紋はさらに広がりそうだ。

 小倉会長は一瞬、険しい表情を見せた。JFAハウス内で開かれたメディアとのお茶会で、前日(20日)JPFAから「ボイコット」という言葉が出たことに触れ「ボイコットという言葉は不愉快になる。ボイコットしたい人は『どうぞ』という感じになる。それ以外の選手でやればいい」と、露骨に不快感を示した。

 JPFAは、W杯南アフリカ大会前から、日本協会に対して勝利給アップなどの待遇改善を求めていた。協会からの返答が遅延されていたがこの日、ようやく第1回の団交がスタート。協会側は弁護士2人と松田代表チーム部長、福井事務局次長の4人が臨み、JPFA側は松本弁護士と清岡執行役員が出席した。団交の冒頭に、協会側弁護士から(1)選手へのペイメントは協会が決めること(2)選手は代表の試合に出場する義務がある、この2点が、大前提として通達された。

 それに対しJPFA側は、協会の2つの通達を完全否定した上で(1)勝利給100万円にすること(2)肖像権を認めること(3)大会ボーナスの選手への分配率を従来の約25%から50%に引き上げること、以上3つの条件を提示した。今後この提示を協会内で協議し、今週中にも協会としての考えをJPFA側に通達する。

 団交後、JPFAの清岡執行役員は「最後まで話を聞いてもらったわけだし、協会側が聞く耳を持っていただいたので、今日の交渉はポジティブにとらえています」と話したが、同時刻に別の部屋で開かれたお茶会で小倉会長は過激発言。協会トップの発言だけに、協会全体の意見として近日中に伝えられる可能性が高い。

 選手側も1歩も引くつもりはない。今日22日はJPFAの藤田会長やW杯フランス大会前から勝利給を主張してきたカズ(三浦知良)らが会見を開く予定だ。JPFA側は既に、アジア杯予備登録メンバーの現代表選手50人に「銭闘」の了承を得ている。この日の団交でJPFA側から「ボイコット」という言葉は協会側に伝えられていないが、対立が続くと、3月の親善試合はボイコットに発展する可能性がある。

 小倉会長の発言通りなら、親善試合とはいえ、国際Aマッチをボイコットに同意しない選手や大学生、ユースの選手で戦うことになる。サポーターやスポンサー、中継局の理解を得るのは厳しくなる。この日の団交が解決への第1歩になるか、それとも小倉会長の発言で、史上最悪の展開に発展するか。予断を許さない。【盧載鎭】