日本代表に暗雲が立ち込めてきた。日本代表FW本田圭佑(25=CSKAモスクワ)が28日のリーグ戦で負った右膝の故障により、30日の代表練習を取りやめた。この日午前に帰国した本田は、ケガを否定し無事を強調していたが、予想外に重傷だった。宿舎に到着後、埼玉県内の病院に直行し右膝を検査。その後は宿舎で治療した。9月2日の14年W杯ブラジル大会アジア3次予選の初戦北朝鮮戦(埼スタ)は2日後に迫った。ホームで戦うザックジャパンにとって、絶対に負けられないW杯予選の初戦を、大黒柱不在で戦う可能性が高い。日本代表が大ピンチに陥った。

 本田の右膝は重傷だった。代表広報によると、帰国した本田はチームの宿泊先へ向かい、仲間へあいさつを済ませると、スポーツ医療に定評のある埼玉県内の病院に直行した。夕方の練習は回避し、宿舎で治療に専念した。詳しい診断結果は明らかになっていないが「右膝の故障」は、練習ができないほど重い。

 原強化担当技術委員長は「CSKAのドクターと確認のやりとりをしている状態」と説明した。本田はロシアでのエックス線写真を持参したが、日本と診断が異なるため改めて検査を受けた。原因の1つにCSKAの本拠の人工芝がある。原委員長によると本田は「嫌な感じがした。踏ん張って人工芝でやってしまった」と話していたという。

 成田空港に到着した本田は、集まった報道陣に「けがなんかしてないです」とはっきり言った。膝への質問には神経質。負傷箇所を右足か左足かと確認されると「なんのことですか」と問い返した。質問に口元をとがらせ、口調が強くなる。大切なW杯予選を前に、チームの主力が軽々に故障について公にコメントできない。マスコミには故障を否定したが、本田のコンディションは非常に厳しい。

 サングラス、赤いベストに白いシャツ、黒のボトムスにサンダルと、らしいファッションはいつも通りも、歩くスピードはゆっくりだった。迎えに来ていたスタッフも同じことを感じていた。痛めている足をかばうような足取りで、伸縮素材のボトムスだった。

 強いフィジカルが本田の武器でもある。相手守備陣が激しいコンタクトをしてきても、本田がピッチに倒れ込むシーンはほとんどない。それだけに北朝鮮戦で本田が欠場となれば、それは日本にとって大きなマイナスだ。精神的にも強気な本田は、チームの象徴的な存在。ザックジャパンに与える衝撃は計り知れない。

 試合当日の天気予報は雨。かなりの雨量になり、足元はゆるくなる。“重馬場”には強い踏ん張りが欠かせない。会場の埼玉スタジアムの芝は一般的な競技場に比べて長い。長い芝とゆるいピッチは馬力が求められる。仮に出場できたとしても、フリーキックへの悪影響は免れない。軸足の右膝が痛ければ、ブレ球の威力は半減してしまう。

 本田にとって、主力として戦う初めてのW杯予選だけに思いは強い。出場に関する質問には「バッチリです」と即答した。一方、原委員長は「2日の出場は何とも言えない」と言った。チームも本田不在を覚悟して準備に入った。ここまで大きなアクシデントもなく、ザックジャパンはエース本田と背番号「10」香川の成長とともに勝ち続けてきた。このハプニングを乗り越えるには、本田抜きで北朝鮮を退ける以外に道はない。【加納慎也】